乳房星(たらちねぼし)−1・0

【あばよ】

(ブロロロロロロ…)

時は、深夜1時過ぎであった。

私は、ヒッチハイクした長距離トラックの仮眠ベットで眠っていた。

カーラジオのスピーカーからラジオ大阪で放送されている『松村邦洋のオールナイトニッポン』が流れていた。

パーソナリティーの松村邦洋さんが番組の最初にゆうべの阪神ー巨人戦の試合の話題を自慢気に話していた。

それから10分後に、パーソナリティーの松村邦洋さんがリスナーからよせられたハガキを読んでいた。

はがきの内容は、社内恋愛のなやみがどーのこーの…と言うグダグダした話であった。

仮眠ベットで眠っている私は、腹を立てていた。

俺様野郎の男は、社会一般常識が分からないアホンダラだ!!

日本《このくに》の会社は、従業員同士がイチャイチャしているのに経営陣《ジジイども》が知らん顔している…

従業員さんに対して『会社は仕事をする場だ!!』と注意しない上司もドサイテーだ!!

日本《このくに》は、いつ頃からダラクしたのだ!?

1960年代後半だったと思う…

あの当時は、学生運動が盛んな時期であった…

東京都心《としん》の至る場所で大学生たちが自由と権利ばかりを求めてデモ行進や集会を開いていた…

そのニュースは、防衛大学校の寮の食堂のテレビで見たから知ってる…

私が陸上自衛隊少年工科学校《りくじのだんしこう》〜防衛大学校に在籍していた時、寮から一歩も外に出なかった…

いえ、陸上自衛隊少年工科学校《りくじのだんしこう》と防衛大学校のトップから外出厳禁だと命令されたから出なかった…と言うた方が正しい…

学校のトップからの厳命とおりに寮から一歩も出ずに勤勉ひとすじ激まじめひとすじで通した…

防衛大学校を卒業したあと、再渡米した…

アメリカ合衆国本土に到着したあと、海兵隊のブートキャンプに入った。

それからも激まじめひとすじで通した…

それなのに、日本《このくに》の若いもんはなんや!!

勤勉ひとすじ、激まじめひとすじだけの生き方で通した私の気持ちなど分かってたまるか!?

眠っている私は、ひたすら腹を立てまくりながらつぶやいた。

あれはたしか、1982年1月末頃だった。

私は、陸上自衛隊少年工科学校時代《りくじのだんしこうじだい》の先輩からの紹介で東京丸の内にあるフツーのカイシャに再就職した。

時は、1月21日の日中であった。

場所は、丸ビルの30階にあるオフィスにて…

私は、社内で水回り清掃などの雑用をしていた。

どこの部署だったかおぼえてないけど、私はいやたい(やらしい)光景を見て激怒した。

オフィスラブを題材にした恋愛小説に出てくる『俺様上司』の男が女性従業員さんに対してなれなれしくしているのを見た…

俺様上司は、女性従業員さんに対して『今夜は空いてるかな?』…となれなれしい声で言うた。

みんなの模範にならなければならない人間が部下の女性にいやたいことをするのはゴンゴドーダンだ!!

思い切りブチ切れた私は、俺様上司に対して『ふざけるなこの野郎!!』と怒鳴りつけたあとすぐに職場放棄をした。

私に怒鳴られた俺様上司は『ふふーん〜』と言う表情を浮かべていた。

職場放棄した私は、ビル内にある喫茶店《さてん》で時間をつぶした。

時は、夜7時頃であった。

ところ変わって、吉祥寺南町《きちじょうじみなみまち》にある大型の家にて…

家は、陸上自衛隊少年工科学校時代《りくじのだんしこうじだい》の先輩とその家族たちが暮らしている家である。

私に怒鳴られた俺様上司の男は、先輩の奥さまの弟さんで、この家でゲシュクしていた。

家族は、先輩夫婦と先輩の両親と24歳くらいの弟さんと俺様上司の男だった…

私は、先輩から『うちでごはん食べろ…お風呂もうちで入れ…』と言われたのでここに来た。

みんなでごはんを食べていた時であった。

先輩の弟が俺様上司の男の頭を物で殴りつけたあと、怒鳴りつけた。

(ガーン!!)

「オドレ俺様!!」
「なにするのだよ〜」
「ふざけるな非常識野郎!!ぶっ殺してやる!!」

この時、先輩の奥様が困った声で言うた。

「ちょっと、なんで急に怒るのよ〜…(俺様上司)になんの落ち度があるのよ〜」
「落ち度があるから殴った!!」
「(先輩の弟)さん…」
「なんや!!文句あるのか!?(俺様上司)がオレにいちゃもんつけてきたから仕返ししたんや!!」
「(先輩の弟)さん〜」
「口出しするな!!」

先輩は、怒った声で俺様上司の男を怒鳴りつけた。

「オドレ(俺様上司)!!」
「なんだよ~」
「オドレはどこのどこまでふざけているのだ!!」
「ふざけてないよぅ~」
「だまれクソアホンダラ!!おなごをくどくことと納豆のパックを空けることだけはいっちょ前だから勤務態度が悪いのだよ!!」
「あなた!!」
「だまれ!!テイシュに口答えをするな!!」
「あなた言い過ぎよ!!」
「だまれ!!テイシュの命令に従え!!」

先輩は、奥様を怒鳴りつけたあと俺様上司男をボロクソに怒鳴りつけた。

「コラ!!コラといよんのが聞こえないのか!?」
「義兄《にい》さん…」
「オドレはいつになったら転勤するのだ!?」
「またその話しかよぅ〜」
「やかましいゲシュク魔!!イソン魔!!仕事ができないプレーボーイ野郎!!自立しろ!!自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ自立しろ!!自立しろといよんのが分からんのか俺様クソバカ野郎!?」

(バーン!!)

思い切りブチ切れた私は、平手打ちでテーブルをバーンと叩いたあと席を立った。

この時、先輩のご両親がおどろいた。

私は、先輩のご両親に対して怒った声で言うた。

「あの〜、カプセルホテルに行っていいでしょうか?」

先輩のお母さまが困った声で言うた。

「イワマツくん、ごはんが残っているけど…」

私は、ものすごく怒った声で言い返した。

「オレ…うざいんだよ!!」
「うざいって…」
「うざいと言うたらうざいんだよ!!」

この時、先輩の奥さまが私に泣きそうな声で言うた。

「イワマツさん〜」
「なんぞぉ!!」
「あの…すみませんでした〜」
「ふざけるな!!」
「主人は、弟が自立しないことに対してイライラしているのです…」
「だまれ!!」

先輩が急に怒鳴り声をあげたので、奥さまはものすごく泣きそうな声で言うた。

「あなたやめてよ!!」
「だまれ!!」
「なんでうちの弟ばかりを攻撃するのよ!?」
「だまれ!!テイシュに意見を言うな!!」
「あなた!!」
「だまれ!!」

(ガツーン!!)

思い切りブチ切れた先輩は、俺様上司男のこめかみをグーで殴りつけた。

奥さまは、泣きそうな声で先輩に言うた。

「あなた!!なんで弟ばかりを攻撃するのよ!!」
「だまれ!!オレは(俺様上司)が気に入らないから殴った!!」
「あなた!!」
「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれ!!だまれといよんのが聞こえないのか!?」

奥さまに対してよりし烈な声で怒鳴りつけた先輩は、右足で俺様上司男を激しくけとばした。

私は、よりし烈な怒りに震えながら先輩のご両親に言うた。

「もう帰ります!!」

先輩のご両親は、ものすごく困った声で私に言うた。

「帰るって…それじゃあ今夜はどこで寝るのだよ〜」
「そうよ…外は寒いよ…」
「ここから出してください!!」
「それじゃあどこで寝るのだよ〜」
「うざいんだよ!!ここから出せよ!!」

先輩の父親は、ものすごく困った声で私に言うた。

「夕方の天気予報を聞いてないのか?」

先輩の母親は、ものすごく困った声で私に言うた。

「今夜の気温は、氷点下になると言うてたのよ…外で寝るのは無理よ…」
「だからどうしろと言うのだよ!?」
「うちにいなさいといよんよ~」
「ごはんがたくさん残っているわよ…お風呂もうちで入ったらいいよ…」
「(先輩)には厳しく注意しておくから…キゲンをなおしてくれ〜」

この時であった。

(ドカッ!!)

先輩の弟が、私を両手で突き飛ばした。

「ふざけるな!!」
「なにするのだ!!」
「帰れ!!」

(ガツーン!!)

この時、先輩の父親が先輩の弟のこめかみを硬いもので殴りつけた。

「なんやオドレ!!」
「(先輩の弟)!!」
「ふざけるなクソバカ!!」

(ガツーン!!)

先輩の弟は、先輩の父親をグーで殴りつけた。

思い切りブチ切れた先輩は、弟の頭をつかんだあとカベに殴りつけた。

その後、先輩は家族たちに対して殴るけるの暴行を加えた。

その末に、ワーワーさけびながら暴れまわった。

ドサイテーだ…

ドサイテーだ…

この家の一家は、全員ドサイテーだ!!

私は、するどい目つきで一家をにらみつけたあとショルダーバッグを持って家から出た。

先輩の家から飛び出した私は、国電吉祥寺駅の付近にあるカプセルホテルで一夜を明かした。

1月22日の朝10時頃であった。

私は、国電中央本線〜山手線〜京浜東北線の電車を乗り継いで横浜へ逃げた。

横浜に着いたのは、昼過ぎであった。

またところ変わって、山下公園にて…

公園のベンチに座っている私は、ぼんやりとした表情で考え事をしていた。

私は…

どんな人生を送りたいのか?

恋人を作って…

結婚して…

家庭を持って…

小さいけど、一戸建ての家を持って…

テイネン後は、豊かなローゴを過ごす…

ただそれだけ…

…………

ただそれだけしか頭にない…

ただそれだけしか頭にないのに…

故人(セヴァスチャンじいさん)が訣定《けってい》した計画書に従う人生を過ごしたから大失敗した…

また大学《ガッコー》へ戻れと言うのか?

私は…

どうすればいいのか…

分からない…

(ピーッ…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、夜9時過ぎであった。

私は、国電横浜駅から西鹿児島(鹿児島中央)行きの寝台特急はやぶさに乗って旅に出た。

私は、B寝台個室のベットでウォークマンを聴きながら寝ていた。

イヤホンから研ナオコさんの歌で『あばよ』が流れていた。

東京に来て大失敗した…

サラリーマンの暮らしを選んで大失敗した…

やっぱり、大番頭《おおばんと》はんたちを探しに行こう…

イワマツの財産一式と仕事に必要な資格と修士博士号と軍位がないと仕事ができないし生きていけない…

私は、非常に強い危機感をつのらせながらつぶやいた。
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