乳房星(たらちねぼし)−1・0

【午前さま】

日付が変わって、9月9日の深夜0時半頃であった。

またところ変わって、福也《さちや》さんの実家の大広間にて…

家の大広間には、麻里子《まりこ》ひとりがいた。

温大《はると》の帰りをひとりで待っている麻里子《まりこ》は、ひどくいらついた表情で柱時計を見つめていた。

そこへ、トイレから部屋に戻る途中の福也《さちや》さんが通りかかった。

麻里子《まりこ》は、部屋に戻る途中の福也《さちや》さんを呼んだ。

「福也《さちや》。」
「なんや!!」
「ちょっと、話があるけど…」
「話なんかしたくねえよ!!」
「なんでそんなに怒るのよ…おねえさんはおだやかに話し合いがしたいのよ…」
「話なんかしたくねえよと言うたらしたくねえよ!!」
「福也《さちや》、5分だけでいいからおねえさんの話を聞いてよ!!」
「だから、なんの話し合いをするのだよ!!工場《ぼろ》に帰れと言うのか!?」
「福也《さちや》、主任さんが福也《さちや》のことを心配して電話をかけてきたのよ!!」
「主任《あのヤロー》は、頭ごなしにクビだと言うた!!」
「言うてないわよ!!主任さんは、福也《さちや》が前に勤めていた職場でどんな仕事をしていたのかとたずねただけなのよ!!」
「ふざけるな!!主任《あのヤロー》は、グダグダグダグダグダグダグダグダ文句を言うた!!…『(前の職場)をなんでやめたのか?』と言うたあと、『(前の職場)がどーのこーの…』と言うた!!」
「主任さんは、前の職場でどんな仕事をしていたのかと聞いたけど、クビとは言うてないのよ!!」
「やかましいだまれ!!おネエは主任《あのヤロー》とどんな関係があるのだよ!!」
「福也《さちや》!!落ちついてよ!!」
「わああああああああああ!!」

思い切りブチ切れた福也《さちや》さんは、より激しい叫び声をあげながら外へ出た。

(ガシャーン!!ガシャーン!!ギャアアア!!)

思い切りブチ切れた福也《さちや》さんは、近くにあった石をよその家のガラス窓に投げつけるなどして暴れわ回った。

その末に、福也《さちや》さんは通りかかった酔っぱらいのグループとドカバキの大ゲンカを繰り広げた。

麻里子《まりこ》は、ものすごく恐ろしい声で泣き叫んだ。
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