乳房星(たらちねぼし)−1・0

【だらしがないね】

時は、日本時間の夕方5時過ぎであった。

ところ変わって、愛媛県庁《けんちょう》のオフィスにて…

(キンコンカンコーン〜)

オフィスに終業を知らせるチャイムが鳴った。

同時に、職員たちが帰宅の準備を始めた。

この時、智之《ともゆき》は帰宅の準備をせずにそのままデスクに座っていた。

上の人がデスクにまだ座っている智之《ともゆき》に対してあつかましい声で言うた。

「則本《のりもと》くん〜」
「はい?」
「みんなが帰宅準備をしているのに、なんでしないのかな?」
「はい?」
「5時半に来る特急バスに乗るのだろ…家族みんなが則本《のりもと》くんの帰りを待っているのだよ…おじいさんは家族そろって晩ごはんを食べたいと言うてるよ…早く帰ってあげなさい…」

上の人にあつかましく言われた智之《ともゆき》は『かえりゃいいんだろ!!』と怒りながら帰宅準備を始めた。

時は、夕方6時50分頃であった。

ところ変わって、福也《さちや》さんの実家の大広間にて…

大広間のテーブルに福也《さちや》さんと章弘《あきひろ》と麻里子《まりこ》とことはの4人がいた。

温大《はると》は、まだ帰宅していなかった。

テーブルの上には、ことはが作った晩ごはんが並んでいた。

この時、智之《ともゆき》から電話がかかってきた。

電話の応対は、麻里子《まりこ》がしていた。

麻里子《まりこ》は、受話器ごしにいる智之《ともゆき》にあつかましい声で言うた。

「智之《ともゆき》!!きょうは早く帰って来なさいと言うたでしょ!!…どうして帰りのバスに乗り遅れたのよ!!…きょうは、ことはさんが智之《ともゆき》のためにお肉をタクサン焼いたのよ!!…おじいちゃんは、家族そろって晩ごはんを食べる時間を楽しみにしているのよ!!…なんでおじいちゃんの楽しみをぶち壊すのよ!?」

この時、近くにいた福也《さちや》さんがいらついた表情で『おネエ!!』と言うた。

麻里子《まりこ》は『ちょっと待って…』と言うたあと困った声で福也《さちや》さんに言うた。

「福也《さちや》、今おねーさんは智之《ともゆき》と電話しているのよ!!」
「智之《クソガキ》は放っておけよ!!」
「そうはいかないわよ…おとーさんはみんなとごはんが食べたいと言うてるのよ!!」
「智之《クソガキ》が帰って来るまで待てと言うのか!?」
「だから、帰って来るように言うから待ってよ!!」

麻里子《まりこ》は、ものすごく怒った声で受話器ごしにいる智之《ともゆき》に言うた。

「もしもし智之《ともゆき》!!福也《おじさん》がものすごく怒り狂っているわよ…智之《ともゆき》!!親の言うことを聞きなさい!!」

(ガーン!!)

思い切りブチ切れた福也《さちや》さんは、右足で電話機をけとばしたあとこう言うた。

「ふざけるな!!こんな気持ちでめしが食えるか!!」
「福也《さちや》!!」
「うちにいたらむしゃくしゃするんだよ!!」

ものすごく怒り狂った福也《さちや》さんは、食卓をけとばしたあと麻里子《まりこ》に言うた。

「外へのみに行く!!」
「福也《さちや》!!待ちなさい!!」

(バーン!!)

思い切りブチ切れた福也《さちや》さんは、玄関の戸を激しくしめたあと家から出て行った。

章弘《あきひろ》は、ものすごくいじけた表情で『ごはんいらん!!』と言うたあと部屋に閉じこもった。

麻里子《まりこ》とことはは、ものすごく困った表情であたりを見渡した。

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