乳房星(たらちねぼし)−1・0

【明日の愛】

時は、ドバイ時間正午頃であった。

またところ変わって、ドバイ国際本社のオフィスビルの最上階にあるスタッフさん食堂にて…

ゆかさんは、他のスタッフさんたちと一緒にレジの前に並んでいた。

この時、他のスタッフさんの一人がゆかさんに対してもうしわけない声で『日本から国際電話《コレクトコール》がきました~』と言うた。

電話は、奈保子《なおこ》からであった。

ゆかさんは、ものすごくめんどくさい表情で食堂内にある国際電話対応の公衆電話コーナーへ行った。

公衆電話コーナーにて…

ゆかさんは、受話器を手にしたあとめんどくさい表情で言うた。

「もしもし奈保子《なおこ》さん!!国際電話《コレクトコール》は着信側に負担がかかるからやめてと言うたでしょ!!うちらはドバイにいるのよ!!奈保子《なおこ》さん!!」

ゆきさんが入院している済生会病院にて…

病室は、きわめて危険な状態におちいった。

ギャラクシーで電話をかけている奈保子《なおこ》は、受話器ごしにいるゆかさんに言うた。

「ゆかさん!!今、富田校区に緊急安全確保が出たのよ!!病院の一階に川の水がたくさん入ったのよ!!…その上に義母《おかあ》さまが急に暴れ出したのよ!!…主人が必死になって止めているけど、タイショできないの!!ゆかさん聞いてるの!?」

ゆかさんは、受話器ごしにいる奈保子《なおこ》に対して怒った声で言うた。

「うちらもできたらゆきのもとへ行きたいわよ!!せやけど、ドバイから今治までの間は相当なキョリと時間があるのよ!!…それと、ドバイの日曜日は平日よ!!平日!!」

奈保子《なおこ》は、ものすごく泣き叫ぶ声で言うた。

「ドバイの日曜日がヘージツって…おかしいわよ!!…なんで日曜日がヘージツよ!!」

ゆかさんは、怒った声で奈保子《なおこ》に言うた。

「そないに言うのであれば、あんたのおとーさんに聞いたらァ!!…あんたのおとーさんは総合商社に勤務していた時に海事部に勤務していたのでしょ…せやったら分かるはずよ!!…それよりも奈保子《なおこ》さん!!うちらはこの先もスケジュールがぎっしりと詰まっているのよ!!いつお見舞いに行くことができるのか分からないのよ!!」

(ガシャーン!!)

思い切りブチ切れたゆかさんは、電話をガシャーンと切ったあと怒り狂った。

またところ変わって、ゆきさんが入院している病室にて…

哲人《てつと》は、必死になってゆきさんをなだめていた。

「かあさん!!かあさん!!」
「離して!!離して!!」
「かあさん!!落ちついてよ
!!」
「哲人《てつと》!!もうおかーさんは、静かに人生を終えたいのよ!!もうつかれたのよ!!」

それから数秒後であった。

「うううううう…」

(グハッ…)

この時、ゆきさんが再び口元から大量に吐血した。

「かあさん!!かあさん!!かあさん!!」
「義母《おかあ》さま!!」
「かあさん!!」
「アタシ、医師《せんせい》を呼んでくる!!」

奈保子《なおこ》は、病室から出たあと大急ぎで医師を呼びに行った。

それから5分後であった。

この時、ゆきさんは十二指腸にかなり大きなダメージがあったと診断された。

これにより、ゆきさんは緊急のオペを受けることになった。

(カチャカチャカチャカチャカチャカチャ…)

ゆきさんは、ストレッチャーにのせられたあと手術室に運ばれた。

このあと、緊急のオペが始まった。

緊急のオペは、約10時間に渡って行われた。

緊急のオペを受けたゆきさんは、最悪の事態は免れた。

緊急のオペのあと、ゆきさんは集中治療室に運ばれた。

ゆきさんは、それから3〜4日の間集中治療室のベッドで眠りつづけた。

哲人《てつと》は、ものすごく心配な表情でゆきさんを見つめながらつぶやいた。

かあさん…

かあさん…

目をさましてよ…

かあさん…

かあさん…

哲人《てつと》は、その場に座り込んだあと『ううう…』と泣いた。

奈保子《なおこ》は、哲人《てつと》の肩をやさしく抱きながらぐすんぐすんと泣きじゃくった。
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