乳房星(たらちねぼし)−1・0

【悲しき口笛】

時は、7月30日の朝10時頃であった。

この日も、私は警察署内にいた。

きのう(7月29日)、私は今治大丸(デパート)で男の子を保護したあと警察署《ここ》に連れてきた。

私は、ゼンイで人助けをしたのに警官《ポリコー》が私をコウソクした…

警官《ポリコー》は、男の子の親御さんと会ってほしいとぬかしたけど、私にどうしろと言うのだ…

警官《ポリコー》は『金一封《シャレイ》を受け取るため…』と答えた…

冗談じゃない!!

私は、カネ目当てで人助けをしたのではない!!

それなのに、警官《ポリコー》がわけのわからんことをグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダ抜かしているのでますますはぐいたらしくなった!!

………………

問題は、保護された男の子である。

男の子は、生活安全課《セイアン》の職員たちからあれこれとたずねられたので大パニックを起こした。

『どこから来たの?』
『おとーさんとおかーさんの名前は?』
『今治《ここ》に知っている人はいるのかな?』

職員たちは男の子にあれこれとたずねていたけど、男の子は『えーんえーん…』と泣いてばかりいた。

おいコラ警官《オドレら》!!

ええかげんにせえよ!!

………

…と怒りたくなった。

別の職員から聞いた話であるが、男の子が背負っていたリュックサックの中に入っていた持ち物に男の子の名前と住所地が記載されていないことが分かった。

これでは、男の子は家に帰ることができない…

さらにその上に、男の子がどこから来たのかが明らかになった。

男の子は、長野県から来たと言うた。

なっ、長野県!?

男の子は、長野県から今治《ここ》までどうやって来たのか?

職員は、私に1枚の書面を手渡した。

それによると、男の子は長野県で暮らしているエッセイストの先生が主宰の子どもキャンプにいた。

3日前に、エッセイストの先生が男の子に対して『お前なんかクマのエサになってしまえ!!』とボーゲンを吐いてイカクした…

その上に、物で攻撃されるなどの暴力を受けた。

そのまた上に、各地《よそ》から来た子どもたちからどぎついいじめを受けた…とも言うた。

それを聞いた私は、ものすごく怒り狂った。

はやくここから出せよ!!

私は今、非常事態におちいってるのだぞ!!

はやく出せと言うたら出せ!!

結局、この日も私は留置場で寝泊まりすることになった。

もう許してくれよ…

こんなローヤにいるのはイヤや…

この日もまた、寝れなかった…

サイアクだ…

7月31日の朝10時頃であった。

ここに来て3日目になるけど、男の子は今もビービービービービービービービービービー泣きよった。

職員たちの言い方が悪いのか…

それとも、男の子がうまく伝えることができないのか…

私のイライラが頂点に達したみたいだ。

男の子は、現地でどぎついいじめに遭ったのは本当なのか?

それよりも、男の子の持ち物に氏名・住所地が記載されていないことが原因で男の子の親御《おや》がどこで暮らしているのか…と言うのが分からない…

もうイヤや…

限界だ!!

時は、午後2時過ぎであった。

おんまく頭にきた私は、ショルダーバッグを持って生活安全課《セイアン》の部屋から出ようとした。

それを職員が両手を広げて止めたので、大ゲンカになった。

「ちょっと!!なんで両手を広げて止めるのですか!?」
「あの…まだいてください〜」
「出してください!!」
「あの…親御さんが来るまで待ってください〜」
「なんで待たないといかんのですか!?」
「ですから、金一封《シャレイ》を受けとるために…」
「オレはカネ目当てで人助けをしたのではないのですよ!!」
「わかってますよぅ~…でも…」
「なんで金一封《シャレイ》を受け取れと言うのですか!?」
「少しだけでいいからお願いします…」
「少しってどれくらいぞ!?」
「ですから少しですよ〜」
「少しってどれくらいぞ!?」
「ですから少しと言うたら少しですよ〜」
「ふざけるな警官《ボケ》!!」
「ボケとはなんだ!!」
「やかましい!!コネで愛媛県警《けんけい》に入った警官《ナマクラ》!!」
「ワシは巨人軍《ジャイアンツ》の捕手《キャッチャー》か!?」
「それを言うならヤマクラ!!」
「ほんなら、名物ハトポッポのクッキーか!?」
「それはカマクラ!!」
「ほんなら雪のほこらか!?」
「それもカマクラや!!」
「それなら、なんだと言いたいのだ!?」
「やかましい!!人のコネを使って愛媛県警《けんけい》に入った警官《コネじじい》!!」
「この野郎!!もういっぺん言うてみろ!!」

私と職員は、ヨレヨレになるまで大ゲンカを繰り広げた。

その時であった。

背の低い婦警さんが生活安全課《セイアン》の部屋に入ったあと職員に声をかけた。

「カチョ〜」
「なんだね。」
「男の子のおとーさまとおばあちゃまがお越しになりました。」

なんや…

今頃になって、なんで来た!?

私は、よりしれつな怒りに震えた。

それからしばらくして、60代後半の女性が40代なかばの男をひっぱりながら部屋に入った。

「すみません〜」

60代の女性は、ものすごくヘラヘラした顔で職員たちに声をかけた。

私は、よりしれつな怒りに震えながら職員に言うた。

「ちょっと!!」
「はい?」
「『はい?』じゃないでしょーが!!これは一体どう言うことですか!?」
「ですから、親御さんが男の子を迎えに来たのですよ~」
「ああ、そうですか…それなら警察署《ここ》からいますぐに出してください!!」
「出しますよ〜」
「出せと言うたら出せ!!金一封《カネ》はいりません!!」
「分かりましたよ〜」

私は、ショルダーバッグを持って生活安全課《セイアン》から出た。

しかし、部屋を出てから10歩先で背の低い婦警さんに止められたあとまた生活安全課《セイアン》に戻された。

「ちょっと!!出してくださいよ!!」
「(婦警さん、優しい声で言う)あの〜、親御さんが金一封《シャレイ》を渡したいと言うてるのよ〜」
「オレはカネ目当てで人助けをしたのではないのですよ!!」
「わかってますよ…でも、親御さんは金一封《シャレイ》を渡したいと言うてるのですよ~」
「金一封《カネ》はいらねーと言うてるのに、なんで受け取らなきゃいかんのだ!!離せ!!」

私を引っ張ってきた婦警さんは、職員に言うた。

「カチョ〜、お連れしました〜」
「分かった…(イワマツに言う)あの〜…ここはひとつ…金一封《シャレイ》を受け取ってくれますか?」

職員は、私に迎えに来た親御さんから金一封《シャレイ》を受け取ってほしいと言うた。

男の子の祖母は、黒のクロコダイルのハンドバッグの中から金一封《シャレイ》を取り出そうとした。

この時、男の子の父親《テテオヤ》が男の子に対して『いつ帰ってきたのだ!?』と怒鳴ったあと平手打ちで男の子の顔を激しく叩いた。

(パチーン!!)

父親《テテオヤ》から平手打ちで顔を叩かれた男の子は、よりしれつな声で泣き叫んだ。

「ギャー!!」

この時、端にいた祖母が父親《テテオヤ》の頭をパンプスの先で殴った。

「圭佑《けいすけ》!!」

(ガーン!!)

頭を殴られた父親《テテオヤ》は、その場に座り込んだあと女々しい声で泣き出した。

オドレらふざけるな!!

私は、よりしれつな怒りに震えながら職員に言うた。

「あのすみませんけど…金一封《シャレイ》はいらないので帰らせてください。」
「分かりましたよ〜」

よりしれつな怒りに震えている私は、ショルダーバッグを持って生活安全課《セイアン》から出て行った。

警察署から出た私は、旭町のショッパーズプラザ(スーパーダイエー・今は今治国際ホテルの駐車場になっている)の前の交差点から一方通行の通りを通って恵美須町《えびすちょう》の大通りへ歩いて向かった。

その後、今治城《おしろ》の東側の通りから産業道路《バイパス》〜喜田村交差点を通って唐子浜へ向かった。

その間も、私は怒りに震えていた。

ホンマにふざけるなよ…

何が『いつ帰ってきたのだ!!』だ…

あの祖母《バアやん》もふざけてるワ!!

ヘラヘラヘラヘラ嗤《わら》いながら『すみませんでした~』といよったからよけ頭に来たわ!!

…………

それよりも、保護された男の子はこのあとどうなるのか?

あの様子では、また長野県《シンシュー》に戻されると思う…

父親《テテオヤ》は、男の子にどうしてほしいのだ…

男の子に自立しろと言いたい気持ちは分かるけど、頭冷やして冷静になれよ…

あの様子では、親子が仲良く暮らして行くことはドダイ無理だと思う(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)
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