乳房星(たらちねぼし)−1・0

【あゝ無情】

それから20分後であった。

特大広間のテーブルにA・Bの2班のメンバーたちとゆなさんとゆみさんとゆらさんといとと哲人《てつと》とてつとのカノジョと明憲《ムコハン》が集まっていた。

テーブルの上には、哲人のカノジョが作った晩ごはんが並んでいた。

マァマは、私が食べるサワラの味噌煮を食べやすいサイズにさばいていた。

「よーくん、お魚の身がさばけたよ。」

マァマは、私が食べるサワラの味噌煮をゆっくりと手渡した。

私は、ひとことも言わずにゆっくりと晩ごはんを食べていた。

みんながゆっくりと晩ごはんを食べている中で、明憲《ムコハン》はパクパクと白ごはんを食べていた。

この時、いとがあつかましい声で明憲《ムコハン》に言うた。

「明憲《ムコどの》!!」
「義母《おかあ》さま…」
「お前はこんな時によくパクパクパクパクパクパクパクパクパクパクと食べていられるわね!!」
「義母《おかあ》さま、なにひとりで怒ってはるのですか?」
「怒りたくもなるわよ!!沙都水《さとみ》とあかりがこんな遅い時間に外でチャラチャラチャラチャラチャラチャラチャラチャラしているのを聞いてなんとも思わないの!?」
「沙都水《さとみ》とあかりは、お友だちと一緒にミナミに行くと言うてたよ~」
「明憲《ムコどの》!!」
「義母《おかあ》さま〜」
「あんたが甘やかしてばかりいたから哲人《てつと》が勝手なことをしたのよ!!」
「だから、哲人《てつと》がカノジョと恋愛結婚《けっこん》したことがそんなにアカンのですか?」
「アカンもんはアカン!!」
「せやからなにがアカンねん〜…哲人《てつと》は、カノジョのご両親にあいさつをしたと言うたのだよ…カノジョの両親は許してくれたのだよ〜」
「だけど、哲人《てつと》は自分の両親《おや》には結婚することを伝えなかったのよ!!」

近くにいたゆきさんが泣きそうな声で言うた。

「おかーちゃん!!やめてよ!!ごはんを食べている時にガーガーおらばないでよ!!」

いとは、ものすごくあつかましい声でゆきさんに言うた。

「ゆき!!」
「なんやねん〜」
「なんやねんじゃないでしょあんたは!!」
「哲人《てつと》はわざとうちらに結婚のあいさつをしなかったのじゃないのよ…」
「いいわけ言われん!!」
「ほなどないせえ言うねん…うちはその時、おとーちゃんたちと一緒に海外のあちらこちらを旅していたのよ〜」
「ゆき!!」
「なんやねん〜」
「哲人《てつと》がカノジョの両親にあいさつに行ったのは今年の1月末頃よ!!」
「その時は、鳥取の私立高校《コーコー》にいたけど、3年生の生徒さんたちの卒業後の進路のことなどで頭がいっぱいになっていたのよ!!」
「ゆき!!」

この時、ゆきさんのとなりに座っていたゆいさんが泣きそうな声でいとに言うた。

「おかーちゃん!!ごはん食べている時にガーガーおらばないでよ!!」
「分かってるわよゆい!!だけど、おかーちゃんは哲人《てつと》とカノジョが結婚したことが気に入らないから怒ってるのよ!!」
「ほなおかーちゃんは哲人《てつと》になにを求めているのよ!?」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》のねぼけた性格を治したいのよ!!」
「おかーちゃん!!うちらは明日以降もお仕事の予定があるのよ!!うちらははよ寝たいのよ!!」
「分かってるわよ…せやけどおかーちゃんはあせっているのよ!!」

それを聞いたゆみさんは、怒った声でいとに言うた。

「おかーちゃん!!少しは冷静になってよ!!」
「分かってるわよ〜」
「おかーちゃんは哲人《てつと》にどないしてほしいのよ!?」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》がわけのわからない研究で表彰されたことが気に入らないから大学をやめてほしいのよ!!」
「おかーちゃんがガーガーガーガー言い続けたら哲人《てつと》がイシュクするわよ!!」
「なにいよんで!!哲人《てつと》は『ぼくのリロンは完ぺきだ…』と言うて思い上がっているのよ!!」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》にどないせえと言いたいねん!?」
「大学やめて、堺市役所《しやくしょ》に就職してほしいのよ!!」

見かねた大番頭《おおばんと》はんが、つらそうな声で言うた。

「いと!!晩ごはん食べている時にガーガーおらぶな!!しんどいねんもう〜」

大番頭《おおばんと》はんは、白ごはんが盛られていた砥部焼きのお茶わんを差し出しながらお代わりをもとめた。

「すまんけど、おかわりちょうだい。」

哲人《てつと》のカノジョは、ひとことも言わずにお代わりをついだ。

この時であった。

ゆらさんがテーブルの真ん中に置かれている大皿に盛られているたくあんをはしでつまんだあとそのまま口に入れようとしたので、ゆかさんが怒った。

「ゆら!!」
「なあにゆかねーちゃん〜」
「なあにじゃないでしょあんたは!!大皿に盛られているたくあんは、一度小皿に入れてから食べなさい!!」
「いいじゃん…ケチ…」
「ケチ…うちのどこがケチよ!!」

この時、ゆかさんのとなりにいたゆりさんがゆかさんを止めた。

「ゆか!!」
「おねーちゃん!!」
「ゆか!!落ち着きなよ!!」
「分かってるわよ!!」
「あんたは頭に血が昇ったらすぐにカッとなりやすいからやめてよ!!」
「分かってるわよ!!」

ゆりさんは、ゆかさんをなだめたあとゆらさんに怒った声で言うた。

「ゆら!!」
「なんやねん〜」
「食卓の雰囲気がギスギスしている時にノンキにしていられるわね!!」
「なんでそないに怒ってんねん!?」
「怒りたくなるわよ!!」

この時、ゆりさんの横に座っているゆなさんがあわてた表情で止めに入った。

「ゆりねーちゃん!!」
「ゆな!!」
「ゆりねーちゃんも頭に血が昇ったらすぐにカッとなりやすいからやめてよ!!」
「分かってるわよ!!」

ゆらさんは、泣きそうな声で『うちしんどいねん〜』と言うたので、ゆかさんが思い切りブチ切れた。

「なにいよんであんたは!!あんたはダンナがタンシンフニン中だからと言うてダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラ…とだらけているじゃないのよ!!…うちらが世界じゅうをまわってお仕事している時にあんたはなにしているのよ!!テニスの例会などにうつつぬかしているヒマがあるのだったら、家のことをきちんとしなさいよ!!」

ゆかさんに怒鳴られたゆらさんは、ワーッと叫びながらゆかさんに飛びかかって行った。

思い切りブチ切れたゆらさんは、両手でゆかさんの髪の毛をつかんだ。

「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!」
「なんやねんゆかねーちゃん!!うちが専業主婦の暮らしをしていることがそんなにいかんの!?ふざけるな!!」
「髪の毛を引っ張んないでよ!!」

ゆかさんは、ゆらさんを両手で突き飛ばした。

その間に、付き人軍団の男たち800人が特大広間にやって来た。

付き人軍団の男たちは、A・Bの2班のメンバーたちとゆなさんとゆみさんを2つ先の部屋に誘導させる準備と防衛を始めた。

その間に、ゆかさんとゆらさんが取っ組み合いの大ゲンカをしていた。

ゆかさんに両手で突き飛ばされたゆらさんは、負けじと反撃した。

「ゆかねーちゃんこそなんやねん!!」
「やったわね!!」

ゆかさんは、ゆらさんを両手で突き飛ばした。

尻もちをついたゆらさんは、立ち上がったあとゆかさんを怒鳴りつけた。

「なんやねんゆかねーちゃん!!」
「どついたろか!!」
「もうどついてるじゃないのよ!!」

思い切りブチ切れたゆかさんとゆらさんがワーッと叫びながら飛びかかって行った。

その間に、哲人《てつと》が入った。

「ゆかおばさま!!ゆらおばさま!!やめてください!!」

ゆかさんとゆらさんは、間に哲人《てつと》が入ったことを知らずに取っ組み合いをしていた。

「なんやねんゆかねーちゃん!!自分かて高望みばかりしていたからムコハンをもらうことができんかったじゃないのよ!!」
「やかましい!!ドアホ!!」
「ふたりともやめてください!!」
「ゆかねーちゃんこそドアホ!!」
「ドアホはあんたや!!」
「あわわわ!!」

(バーン!!)

哲人《てつと》は、ゆかさんとゆらさんに突き飛ばされたあと黄緑色のジュラク壁に正面衝突した。

それでも、哲人《てつと》はゆかさんとゆらさんの取っ組み合いを止めに入った。

「ゆかねーちゃんはうちのどこが気に入らないのよ!!」
「やかましいドアホ!!」
「やめてください!!」
「ゆかねーちゃんが高望みしていたから専業主婦になることができなかったのよ!!」
「うちはえらそうにしているあんたがいらつくのよ!!」
「あわわわ!!」

(バーン!!)

哲人《てつと》は、ゆかさんとゆらさんに突き飛ばされたあとまたジュラクの壁に正面衝突した。

それでも哲人《てつと》は、ゆかさんとゆらさんを止めに入った。

「やめてください!!」
「ゆかさんねーちゃんのわからず屋!!」
「あんたこそなによ!!」
「やめてください…ああああああああああああああああああ!!」

(バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!)

ゆかさんとゆらさんに突き飛ばされた哲人《てつと》は、近くにあった障子戸《しょうじ》に頭から突っ込んだ。

哲人《てつと》さんは、目にあおぢができた上に鼻血をたらしている状態でゆかさんとゆらさんを止めに入ったが、また突き飛ばされた。

(ガシャーン!!)

哲人《てつと》は、縁側にあるガラス戸に突っ込んだあと庭に落ちた。

その間に、ゆかさんとゆらさんの取っ組み合いがさらにひどくなった。

「いたいいたいいたいいたいいたい!!」

ゆかさんは、ゆらさんの髪の毛を引っ張った。

その後、ゆらさんはゆかさんに突き飛ばされた。

「ノーテンキでデリカシーのないあんたにうちらの気持ちなんかわかってたまるか!!」
「あああああああああああああああ!!」

ゆかさんに突き飛ばされたゆらさんは、特大広間のとなりにある台所へ転げ落ちた。

(ドスーン!!ガラガラガラガラガシャーン!!)

同時に、棚に収納されていた金物類がたくさん落ちた。

「なにすんねんドアホ!!いたいいたいいたい!!」

思い切りブチ切れたゆかさんが冷蔵庫の中にチョゾウされていた食材をゆらさんに投げつけた。

「なんやねんあんたは!!サンショクヒルネツキでテレビザンマイ…ふざけるな!!」
「いたいいたいいたいいたいいたい!!」

近くにいたいとが泣きそうな声で言うた。

「ゆか!!やめて!!」

ゆかさんに食材をぶつけられたゆらさんは、近くにあったプラスティックの入れ物に入っていたキムチをゆかさんに投げつけた。

「なにすんねん!!」
「ゆかねーちゃんがうちをぶつけたから仕返しよ!!」
「ふたりともやめてください!!」

この時、明憲《ムコハン》がゆかさんとゆらさんを止めに入った。

ゆらさんは、近くにあった大きめのケーキを手に取ったあとゆかさんに投げつけようとした。

「ケーキはやめてください!!」
「ゆかねーちゃんのドアホ!!」

思い切りブチ切れたゆらさんがゆかさんに向けて大きめのケーキを投げつけた。

「やめてください!!」

(ベチョ!!)

ゆらさんが投げつけたケーキが明憲《ムコハン》の顔を直撃した。

負けじとゆかさんは、冷蔵庫に入っていた小さなケーキ類をゆらさんに向けて投げつけた。

「うちはゆらがいらつくのよ!!」
「ケーキを投げないでください!!」

(ベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョベチョ!!)

明憲《ムコハン》は、ゆかさんが投げつけた小さなケーキの攻撃に遭った。

この時、双方の怒りが最高値《マックス》になった。

「庭に出なさいよ!!」
「上等よ!!」

ゆかさんとゆらさんの取っ組み合いの大ゲンカは、なお続いた。

ゆかさんとゆらさんは、庭でドカバキの大ゲンカを繰り広げた。

「なにすんねん!!」
「わからず屋のあんたは、池に入って頭を冷せ!!」

この時、ボロボロに傷ついた哲人《てつと》が止めに入った。

「ふたりともやめてください!!」
「頭冷やして、反省しろ!!」
「ワーッ!!」

(ドボーン!!)

ゆかさんに突き飛ばされた哲人《てつと》は、近くにあった大きな池に飛び込んだ。

この時、ケーキまみれになっている明憲《ムコハン》が庭にやって来た。

「ゆかねーちゃんこそ池に沈めてやる!!」
「あんたこそ池に沈めてやる!!」
「ふたりともやめてください!!」
「デリカシーがないのはゆかねーちゃんよ!!」
「それはあんたの方よ!!」
「ワーッ!!」
「とうさん!!うしろ!!」

(ドボーン!!)

ケーキまみれの明憲《ムコハン》も池に落ちてしまった。

池から出ようとした哲人《てつと》は、明憲《ムコハン》とぶつかったはずみでまた池に落ちてしまった。

ゆかさんとゆらさんのドカバキの大ゲンカは、それから数時間に渡ってつづいた。
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