私が一番近かったのに…
クリスマスだけではなく、年末年始も私と一緒に過ごしてくれる。
クリスマスは前日だったとはいえ、一夜を共に過ごしたので、結果的にはクリスマスを一緒に過ごしたようなものだ。
とても幸せな時間だった。好きな人と一緒に過ごす、初めてのクリスマスだったから。
ただ、一つ気がかりなことがある。クリスマス以降、愁の様子がおかしい。
もしかして、彼女と上手くいっていないとか?
いや、さすがにそれはないか。惚気話を聞かされたばかりだから。

もしかして、この旅行を機に私との関係を制裁するつもりとか?
だから、最後の思い出旅行ってことなのかな?
急に優しくしたり、プレゼントしてくれたりしたのは、そういう意味だったのかもしれない。
そう考えると、途端に舞い上がっていた気持ちが、一気に沈んだ。

何度も頭で繰り返し違うと、信じてみようとしたが、私の立場上そう考えるのが妥当だと、どんどん冷静になっていく自分がいた。
セックスをしてしまうと、いつも忘れてしまう。私達の関係がセフレであるということを。
気持ちよくて、それだけで満たされてしまって。愁も同じ気持ちなのでは?と勝手に錯覚してしまう。
満たされる度に虚しくなる。同じ気持ちではないということを思い知らされて。

このままじゃダメだ。心から旅行を楽しめない。今はネガティブ思考は禁止。早く寝よう。明日のために。
明日になれば、楽しみなことが待っていると、自分に何度も言い聞かせて、眠りについた。


           ◇


朝早くから、携帯のアラーム音が鳴り響いている。
何故、こんな朝早くに?と、最初は嫌々ながら目を開けた。
少しずつ目が覚めていき、頭が回転し始め、思い出していく。
そうだ。今日は愁との旅行当日だった…と。
旅行のために用意した、新品の洋服に袖を通す。
愁にこの服、可愛いって思ってもらえるかな?思ってもらえるといいな。
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