私が一番近かったのに…
「幸奈、手を出して」

私は愁の言われるがままに、手を差し出した。
すると、彼は私の手を取り、手を繋いでくれた。思わずドキッとした。
どうしよう…。彼に私の胸の鼓動が聞こえてしまわないかな?
なんてソワソワしながら、彼の手の大きさや温もりを感じていた。

「幸奈の手、小さいな」

彼の放った何気ない一言だった。自分だとよく分からないが、私の手が小さいというよりは、彼の手が大きいのだと思う。

「そうかな?逆に愁の手は大きくて、男の人の手って感じだね」

…しまった、と思った。こんな言い方をしてしまえば、男性として愁を意識しています…と、バラしているようなものだ。

「なんか恥ずかしいな。嬉しいけど…」

他愛のない会話をする時間でさえも幸せで。
もっとこの時間が続けばいいのに。そんな欲張りな気持ちが胸を占めた。

「それは私の台詞だよ。私も嬉しかった。頑張って浴衣を着て、それを褒めてもらえて。頑張ってよかったなって思えた。
だから愁、私は今日、愁と一緒に来れて、嬉しい。誘ってくれてありがとう」

彼は私の方を振り向いてくれた。彼に見つめられているだけで、私の鼓動は更に高鳴った。

「よかった。幸奈が俺の言葉で喜んでくれて。幸奈がそこまで喜んでくれると、俺まで嬉しくなる…」
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