私が一番近かったのに…

6章:壊れていく音と、あなたの優しさ

旅行が終わってから、暫くの間はバイトで忙しかった。
コンビニとはいえども、混む時は混む。特にお昼の時間帯なんかは、お昼ご飯を求めてやってくるため、一瞬で列ができてしまう。
そうなってしまうと、二人一組で一つのレジを請け負い、列が消えるまでは、同じことを何度も繰り返す。
お正月休みが過ぎれば、少し落ち着いてくるので、また暇に逆戻りする。
そのお陰で、ゆっくり品出しをすることができるわけだが…。

そんな中、いつも遊びにやってくる愁の彼女が、最近、顔を出さなくなった。
お店が忙しいから気を遣っているのかと思いきや、忙しい時期を過ぎても、彼女が訪ねてくることはなかった。
バイト仲間からは、別れたのではないかと囁かれていた。
直接本人に確かめる勇気がなかったため、真相は有耶無耶のままである…。

私からは聞けない。どこまで踏み込んでいいのかも分からないし、それに本人に聞いたところで、ちゃんと答えてくれるのかさえも分からない。
知りたいけど、怖い。知らない方が絶対、いいに決まってる。
そんな気持ちが先行し、私はわざと愁を避けていた。
バイトの時間をずらしたり、一緒に帰らないようにしたりして。

彼女が遊びに来なくなったのって、もしかして、彼女に私との関係がバレたとか?
私のせいだとしたら、余計に気まずい。もう一緒には居られない。
しかし、避けたところで、接点を完全に失くすことはできない。現実はそんなに甘くはなかった。冬休みが終われば、必然的にシフトが被る。
一、二週間避けていた分、どことなく気まずい空気が流れていた。

「よ!久しぶりだな」

「うん。久しぶり」

目が上手く合わせられない。あれ?今までどうやって、目を合わせてたっけ?
緊張する。どうしよう。どんな感じで話していたのか、分からなくなってしまった。

「おい、岩城。大平さんが困ってるぞ?
お前ら、喧嘩でもしたのか?」

喧嘩している方が、まだマシだった。
勝手に私が避けた上に、緊張しているなんて。こんなの、どう考えても自業自得だ。

「してませんよ。勝手に幸奈が緊張してるだけっす」
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