私が一番近かったのに…
「…幸奈、まだ起きてる?」

愁の方から話しかけてくれた。ドキドキした。声だけしか分からないこの状況。聞こえてきた声が、いつもより低く感じた。

「起きてるよ。寝なくて大丈夫?」

「大丈夫。まだ少し話したいから、起きてたい」

どんな顔をしているのか、少し気になる…。
でも、今は顔が見えないのが調度いい。もし顔が見えていたら、気持ちを抑えることができなくなってしまいそうだから。
今も上手く抑えられているのか、よく分からないが…。

「幸奈、帰り道で話したこと覚えてるか?あの時、俺の質問には答えずに、誤魔化しただろう?
俺達の間に秘密はナシだ。好きな人がいるのか、教えてくれ…」

どうして、そこまで私の好きな人が気になるのだろうか。
友達だから?それとも、それ以上の感情があるから?

「せっかく上手く誤魔化したのに。愁には秘密。愁にだけは絶対に教えない」

ここで素直に、「あなたが好き」って言えたら可愛い女だったかもしれない。変に意地を張ってしまった。

「えー…。ズルいな、幸奈は。俺はいるって教えたのに」

本当は今すぐにでも教えてしまいたい。それでも愁の気持ちが分からなくて。
私に興味なんてないくせに、こうやって期待させる愁の方がズルくて。ちょっとだけ意地悪してしまった。

「私、教えるなんて言ってないもん。だから、教えない」

「ふーん。まぁ、今日のところはこれで勘弁してやるよ。
でも、次からは覚悟しておけよ」

それから愁は、私の好きな人について、触れてこなかった。
きっと私が頑なに拒否するので、興味が薄れてしまったのかもしれない。
そして、話題はいつの間にか共通の話題に変わり、話が盛り上がった。
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