私が一番近かったのに…
「したいかどうかだけ教えて。したくないなら、しなくていいから」

私は今、とても焦っていた。
そして、そんな私に、愁は戸惑っていた。

「したいかと聞かれたら、そりゃ男だから、したいに決まってる。
でも、どうしてなんだ?そんなに今、猛烈にしたい気分なのか?」

違う。猛烈にしたいんじゃない。私は…。

「もうこの関係を終わりにしたいから、今夜で終わりにするって決めたの」

身勝手な奴だと思われたに違いない。
しかし、愁にどう思われようが構わなかった。

「そうかよ。分かった。今夜、お前を抱き潰すから。覚悟しておけよ」

どこか悲しい目をしていた。それにいつもと違い、言葉に棘があるように感じた。
もしかしたら、怒っているのかもしれない。
それでも、引き止めようとしないのは、愁なりの優しさだと思う。
最後まであなたは、優しすぎて。私の胸は更に締めつけられた。

「早く帰るぞ」

力強く腕を引っ張られた。今夜は優しく抱いてもらえないと覚悟した。
もし、仮に激しく抱かれることを拒んだとしても、ずっと朝まで抱かれ続けるコースに違いない。
愁は私に何かを告げようとしていた。一体、何を告げたかったのだろうか。彼女とヨリを戻したことを聞いてほしかったのかもしれない。
だとしたら、今はまだ聞きたくない。今の私には、まだ受け止められないから。

「待って。愁、早いよ……、」

声をかけても気づいてもらえない。足早に歩く愁に付いて行くだけで精一杯だ。
どうして、そんなに怒っているのか、私にはよく分からなかった。
一方的に終わらせようとしたからなのか、それとも、もうセックスができないからなのか。頭の中は今、グチャグチャだ。
でも、もうそんなことはどうでもよかった。
だって、今夜でもうこの関係は終わってしまうのだから。

「黙ってろ」

道端だというのに、キスで口を塞がれた。いつもと違って、乱暴なキスだった。

「家に着くまで大人しく黙ってろ」

いつもと違うキスに、戸惑いを隠せなかった。
まるで、この関係を終わらせたくないと伝えているかのように感じた。
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