私が一番近かったのに…
「そっか。分かった。それじゃ、帰ろっか」

友達だから、遠慮しているのが伝わってきた。私もそれが愁なりの線引きだと感じ、もうこれ以上、愁には甘えないことにした。
本当は今すぐにでも甘えてしまいたい。もう強がることに疲れた。
それでも私の脳裏には、優しく微笑む彼女の顔が思い浮かんだ。
その度に申し訳ない気持ちになり、甘えることができなかった。
そんなに申し訳なく思うのであれば、いっそのこと、傍にいることさえも止めてしまえばいいのに…。

「うん、そうしよっか」

一瞬、バイトを辞めることも考えてみた。
でも今、接点がなくなってしまえば、私と愁を繋ぐものは何もなくなってしまう。
最悪、アルバイトを辞めてしまったとしても、大学は同じだ。
それでも、その糸が簡単に千切れてしまうような気がした。

愁を好きでいることが辛い。好きでいることを止めたい。
簡単に繋がりが消えてしまえばいいのに。そうすれば諦めがつくのに…。
そう望んでも、まだ繋がりを手放すことはできなかった。

この日も愁は本当に家まで送ってくれた。このまま、帰らせずに私が愁を奪ってしまえば…。
そんな勇気は持てず、そのまま解散した。
未練がましいにも程がある。そろそろ諦めないと、ストーカーと同じだ。
いい加減、愁を好きでいるのを、もう止めようと思う。
愁を好きになってから、友達に合コンに誘われても、全部断ってきた。
いい加減断るのも心苦しいし、それに諦めるいいきっかけにもなる。
もし、次に誘われたら行くことにしよう。そう決意した。
< 34 / 127 >

この作品をシェア

pagetop