私が一番近かったのに…

2章:一番になりたい

「幸奈、終わったか?」

シフトが被っていない日でさえも、今までと何も変わらずに、わざわざバイト先まで迎えに来てくれる。

「ありがとう。帰り支度するから待ってて…」

鞄に荷物を詰め込みながら、少しだけ考え事をしていた。
いつまで、この状態を続けられるのだろうか。逆に私の方が彼女に対して申し訳ない気持ちになり、罪悪感に駆られてしまっている。
愁にはもう彼女がいて。いくら夜道が危険だからとはいえども、シフトが被っていない時まで、私を送り届ける義理はない。

「お待たせ。もう帰れるよ」

ズルい私は、ずっとこの関係に甘えてしまっている。
怖い。いつしかこんなふうに甘えられなくなってしまう日が訪れることが…。
いつも嬉しそうに遊びにやって来る、彼女の顔が浮かんでは消える。
どうしたらいいのだろうかと、考えてはみるものの、私にはどうすることもできなかった。

「どうしたんだ?もう帰れるんじゃなかったのか?」

以前の私だったら、愁が傍に居るだけで穏やかな気持ちになれたというのに…。
今の私は、愁の傍に居るとモヤモヤしてしまう。
恐らく原因は、溢れそうな気持ちを抑えなくてはいけないからであろう。

「ううん、何でもないよ。帰ろっか」

もうこれで何度目だろうか。いつしか私は愁に対して、誤魔化すことが増えた。
そうすることで、これ以上踏み込ませないように、上手く線引きをしている。
今までの愁なら、気になることがあれば必ずといっていいほど、追及してくることが多かった。
でも、手を振り払ったあの日以来、愁は私に対して、深く追求してくることはなくなった。
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