病弱な妹に全てを搾取されてきた令嬢はもう何も奪わせない
(本当にヴァンの手を取ってもいいの?)

色々と考えてしまうがコレットはヴァンの手を取って頷いた。


「わたくしで、よければ……」

「本当ですか!?」

「でもっ、結婚の話は待ってね?ヴァンのことをよく知ってからでいいかしら?まだ心の準備ができないから……」

「コレットがそう言うならわかりました。我慢します」

「ありがとう」


いつもの優しい笑みに戻ったヴァンを見て、コレットはホッと息を吐き出した。
昔は無表情で無愛想だったヴァンはコレットが知らない間に別人のようになってしまったような気がした。
こんな風に熱烈に迫られてしまえば、恋愛なんてしたことがないコレットにとっては刺激が強すぎる。
コレットがクラクラする頭を押さえていると……。


「明日は一日中、一緒に過ごしましょうね」

「え……?」

「過去の辛いことなんて全部忘れて、新しく幸せな思い出を作ればいいんです」


ヴァンの言葉がコレットを優しく包み込んでいく。


「もう少し体調がよくなったら出かけましょうか。コレットに着せたい服がたくさんあるんです」

「ふふっ、わたくしに似合う服なんてあるのかしら」

「ありますよ?コレットはこんなにも美しいんですから」

「ヴァン……」

「あなたのためだったら、僕は何者にだってなれる」


ヴァンはそう言ってコレットの手の甲に口付けた。
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