かつて女の子だった人たちへ
行きずりの男性と寝るなんて、以前の自分なら考えられなかった。だけど、少なくとも今まで会った男性たちは、皆、芽里を女性として尊重してくれた。生理的に気持ち悪いことも、体臭や不潔さに怖気がはしったこともある。それでも、芽里は自分が彼らの中では価値ある存在なのだと知って嬉しい気持ちもあった。

(私みたいなのでもしたいなんて、面白いな)

しかし、その日はいつもと様子が違った。
他の路上売春をしている女性と似た雰囲気で立っている芽里に近づいてきたのはスーツ姿の男性ふたりだった。
普段の客とは雰囲気が違うなと感じながら、ふたりいっぺんだったらどうしたらいいかと考えた。複数での行為には応じたことがない。

「ひとり2、だから」

小さな声で言う芽里に男ふたりは笑い声をあげた。

「お姉さん、俺たちは客じゃないんだよね」
「え?」
「お姉さんはひと月近くここで商売してるみたいだけど、それは誰かに許可を取ったのかな?」

ぞくりとした。心臓がどくどくと嫌な音を立て始める。

「立ちんぼするには、俺たちの会社の許可がいるんだよぉ」
「あっちのふくよかなお姉さんも、あそこの金髪のお姉さんも、みんなうちと契約してんの」

まるで子どもに言い聞かせるように男ふたりは笑顔で説明する。その腹から笑っていない顔に芽里は震えあがった。
ショバ代というヤツだ。真っ当な筋の人たちではない彼らが、この場所での売春を仕切っているのだ。

「とりあえず、うちの事務所でお話しようか」

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