かつて女の子だった人たちへ
「絶対に来て! 頼む! メリーが俺のTOなんだから、ファンの見本になってよ!」

(他の女子にも似たようなことを頼んでるんだろうな……)

芽里の嘆息は細く長かった。
心は虚無感でいっぱいだったが、それでもまだレイキは芽里の恋人だ。話し合うタイミングは今をおいてほかはない。

「レイキ、もうアイドル辞めよう」

芽里ははっきりと言い、レイキの手を取った。

「私も仕事辞めるから、東京を離れよう。私たちのこと誰も知らない街に行って、ふたりでやり直そう」

呆然とするレイキを正面からまっすぐに見つめ、芽里は哀願するように言った。

「お願い、レイキ。私を選んで。アイドルじゃなくて、私との未来を選んで」

レイキが口の中で何かをぼそぼそと呟いた。聞こえないので、顔を近づけようとすると、手を振り払われた。

「意味わかんねー! なんでそうなるの!? 俺を誰より応援してたのはメリーじゃん!」

レイキは勢いのままに怒鳴る。

「なんで? なんでだよ! 俺を支えるんでしょ? それなのに、おかしいだろ!」
「レイキ、落ち着いて」
「絶対にライブに来て! 明日だからね。俺への本気を見せてよ。絶対だから!」

レイキは正気ですらないようなぎょろついた目で芽里をねめつけ、立ち上がった。

「用事あるから出る。明日、頼んだからね。来なかったら俺が大変なことになっちゃう。それはメリーが一番嫌なことなんだ」

ぶつぶつと呪文のようにつぶやきながら、レイキはアパートを出ていった。おそらく、芽里のように金銭的に頼れるファンを回るのだろう。
芽里は床に座ったまま、しばしぼうっとしていた。


< 159 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop