悪魔のみだらな寵愛
 今、私は生君の家にいる。

 さらに言うと、ベッドの上にいて、私の上に生君が覆い被さっている。

「生、君……」

「ん?」

 この状況を一言で説明すると、『絶体絶命』

 なぜならば――生君に両手首をネクタイで縛られ、身動きが取れないからだ。

 ネクタイで私の両手首を縛った張本人を涙目で見る。

「ふふっ、かわいいよ。妃咲」

 このサディストめ! 私に同情するどころか、この状況を楽しんでいるではないか!

「生君……お願いですから、ネクタイを解いてください……」

「んー……どうしよっかなー……」

 うん、駄目だ。

 生君は、私の両手首を縛るネクタイを解くどころか、それを解こうとしない、否、それを解く気が更々ない。

 ……それにしても、生君は目鼻立ちの整った顔だと思う。
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