利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
「さぁ種付けしちゃって!」
「………………」
「カモンカモン!」

 ニッと笑顔を向けると、唖然としていた顔が気付けば愕然としたものに変わり、そしてあっという間に虚無へと変わった。
 
「……ノーカモンだ」
「そ、そのようね」

“ダメだったか”

 流石にその表情で察した私はのろのろと起き上がり、ベッドに腰掛けているロベルトの隣へ座り直す。

 ぼんやりと二人で並んで座っていると、そっと私の手にロベルトが自身の手を重ねてきて。

「今日から暫く休みだから」
「仕事、詰めたって言ってたものね」
「だから愛を育む努力をしてくれないか」
「……うん」

“こんな予定じゃなかったんだけど”

 親からの圧に、申込んだのはそっちのくせに断ってくる求婚者たち。
 そんな彼らから救ってくれたロベルトの便利なお飾りの妻になるつもりだった。

 けれど重ねられたその手がわずかに震えていることに気付いてしまった今、お飾りだとか言っている場合ではないのかもしれない。


“何よりロベルトの手が温かいから”

 私はお飾りの妻改め、愛され妻というやつなのかもしれないとそう思ったのだった。
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