利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった

番外編:お家デートという概念

「お家デートをしましょう」
「え?」

 案の定というか、もはやロベルトらしいというか。
 流石に初夜を過ごした次の日に朝から乗馬なんていう鬼畜なデートは成立しなかったものの、相変わらずロベルトの提案するデートは予定が詰め詰め。

“休みは1ヶ月しかないって言うけどさぁっ!?”

 私のために必死に取ってくれた連休というのは嬉しいが、一日にこなすデートは一日分にして欲しいと思うのは私がワガママなのだろうか。

“絶対違うはずよ!!”

 一緒に過ごす時間の一分一秒を大切にしようと思ってくれているのは嬉しいし、その気持ちは正直くすぐったくて心地良い。
 だが、だてにぐうたらして生きてきた訳ではないのだ。

 体力の限界値が違う。もう、ほんとに。


 だが、私とて今は立派な愛され妻だし、何よりも私だってロベルトと一緒にいるのが嫌な訳などなく――
 
「だからここで、お家デートよ!」
「な、なんだ? それは」
「リルクヴィスト家の祖先から受け継がれているぐうたらデートのことよ」
「そ、祖先から……」

 流石チョロベルト。
 真っ直ぐ見つめて伝えると、彼もド真面目な顔をしごくりと唾を呑んだ。

 
「で、そのデートは何をするんだ?」
「何もしないわ」
「何もしない?」
「そう。何もしないということをするデートよ」
「は、はぁ……?」

“考える時間を与えてはダメよ、リネア! ぐうたらを守らなきゃ!”

「ただのんびりと、一緒にいることを楽しむの」
「一緒に……」
「そう。そういうデートは、夫婦でしか許されないわ」
「え」
「付き合いたての恋人同士がそんな隠居なことをしてどうするの? いわばこれば夫婦にのみ許された特別なデートよ」
「夫婦に、のみ……」

 わざわざどこかに行かなくても一緒にいれるだけでいい。
 ついでに惰眠を貪れたら尚いい。

 そんな本音と下心が少しだけ恥ずかしかった私は、そのちょっとした部分を誤魔化すようにそう言い繕った……結果。
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