財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「ああ、うるさい。もう、後は二人でやってくれ。香月さん、これからもよろしく頼むよ」

「はい」

 奥様は笑顔で私達を見送って下さった。

 歩き出したら、彼がぼそりと言った。

「菜々」

「何ですか?」

「これからさっそく肥料をくれ」

「え?」

「肥料が足りないんだよ。困ったな。水やりで芽は出たけど、俺の栽培担当がケチで肥料を少ししかくれない。これじゃ、双葉が出ても、間違いなく枯れるかもな」

 そう言って、背の高い彼が私をちろりと見る。何なのよ……やっぱり知ってたんじゃない。

「いい気になってますね?それだから奥様に言われるんです。すこしは落ち着いて……」
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