私の彼は、一途な熱血消防士

夏祭り 5

 髪の毛は、結い上げていると着替えるときに引っかかるから着付けの後で何とかしようと思っていたけれど、もしかしてこの流れは、園長先生が髪もセットしてくれる……?

「落ち着いたら着付けを始めましょう。園児たちもお待ちかねよ」

 園長先生の声に、私は頷くと席を立ち、服を脱いだ。

 キャミソールを着替え、浴衣に袖を通すと、後は園長先生にお任せだ。裾の長さを揃えて、背中の縫い目が中央になるよう手で押さえて腰紐を絞める。
 園長先生は手慣れたもので、腰紐を絞めた後も浴衣の長さを調整したり、合わせの部分を揃えたり、襟元も綺麗に見えるよう整えてくれる。

 帯を絞めて、蝶結びになっている作りつけの部分を背中に差し込むと、着付けの完成だ。

「愛美先生、ここに座ってください。髪の毛触りますよ」

 園長先生に促され、私は椅子に座ると園長先生が私の髪の毛に触れた。
 私は仕事中、髪の毛が邪魔にならないよう、いつも後ろで一つに括っている。色気も何もない髪型だ。
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