私の彼は、一途な熱血消防士
「おむかえ、おそいね。もしかしたらママ、おむかえのじかんをまちがえてつたえてるかも」

 言葉を発した子は、さつき先生が受け持つゆり組の沢田(さわだ)美波(みなみ)ちゃんだ。

 さつき先生も時間を気にしている。時計の針は、もうすぐ十二時を指そうとしていた。

「そうだね、ちょっとおうちに電話してみようか。あ、愛美先生、悪いけど美波ちゃんのそばについていてくれますか?」

 電話連絡は、担任であるさつき先生からのほうがいいだろう。

「はい、わかりました。じゃあ美波ちゃん、先生と一緒にここでおうちの人がお迎え来るの待とうね」

 職員室へと向かうさつき先生の後ろ姿を見つめる美波ちゃんの顔は今にも泣きそうだ。そんな美波ちゃんを元気づけようと、私は必死に頭の中で考える。今どきの幼稚園児の関心があるものって、何だろう。

「もうお昼ごはんの時間帯だからお腹すくよね。美波ちゃんは、食べ物は何が好き?」

 結局は無難な食べ物ネタを振ってみると、美波ちゃんも答えてくれる。
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