私の彼は、一途な熱血消防士
「亜沙子ちゃん。あのね、幼稚園の夏祭りはね、みんなの協力がないとできないことなんだ」

 亜沙子ちゃんが私に目を合わせてくれたので、言葉を続ける。

「お祭りは、みんなに楽しんでもらえるよう、亜沙子ちゃんも事前にいっぱい準備を手伝ってくれたよね? そのおかげで、今日はみんな、楽しんでくれたと思うよ。亜沙子ちゃんも楽しかったよね?」

 私の問いに、亜沙子ちゃんは頷いた。その頷きを確認して、私はさらに言葉を続ける。

「でもね、幼稚園のお祭りは、みんなが楽しむために順番で当番を決めたよね? 当番さんは、その時間遊べないからつまらないよね。でも、その当番さんのおかげで、他の人もお祭りを楽しむことができるんだよ」

 私の言葉に、亜沙子ちゃんは黙ったまま下を向いた。

 ここでようやく、今日の行動がみんなに迷惑をかけていたことに亜沙子ちゃん自身も気付いたようだ。

 私の背後に立つ亜沙子ちゃんのお母さんが、この時どのような表情をしていたかわからない。けれど、亜沙子ちゃんのお母さんも私の言葉を聞いて、当番の保護者たちに心のこもった謝罪をした。
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