私の彼は、一途な熱血消防士
 園長先生の声に、私が頷くと、誠司さんも同調した。

 誠司さんがバスタオルと荷物を受け取り、バスタオルを広げると、濡れた私の浴衣の上に被せた。そこで初めて、浴衣が水に濡れて、下着が透けていることに気付く。
 園長先生もそれに気付いたからこそ、バスタオルを用意してくれたのだ。

 紙袋の中には、私が今日幼稚園に着用してきた服とバッグ、バザーで引き換えた食べ物が入れられているという。

 夏だし濡れた浴衣もすぐに乾くとはいえ、救急隊員は男性が多くを占める。これは異性の視線を避けるためにも賢明な考えだ。

「火傷が治るまでこの腕では、幼稚園の仕事は難しいと思います。背中も支柱が当たって怪我をしているので、医師の診断書を取って、今週いっぱいは静養に充てたほうがいいかと……」

 誠司さんの言葉に、保護者や園児たちがざわついている。

「そうですね、まずは病院で先生によく診てもらって。愛美先生、労災申請の手続きをするので、受診したら必ず診断書を取ってください」

 園長先生がそう言うと、誠司さんが代わりに返事をしてくれた。すると少しして、救急車のサイレンが耳に届いた。
 沙織先生が通報してまだそんなに時間はかかっていないのに、随分早いんだなと呑気に考えていると、誠司さんがボソッと呟いた。

「来るのが遅い」
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