私の彼は、一途な熱血消防士
第四章

怪我と告白と 1

 最寄りの消防署はこの幼稚園から車で約十分くらいの場所にある。通報からまだ十分も経っていないはずだ。なのに『遅い』と言葉が出るのは、救急の現場を知る現役消防隊員だからだろう。

 幼稚園の正門前に救急車が到着し、サイレンが止まると、担架を持った救急隊員さんが駆け寄って来た。

「けが人はこちらですね、ちょっとすみません、患部を拝見します」

 隊員の一人が私に近寄り、私の火傷を見ている間、もう一人の隊員が誠司さんと話をしている。消防士は地方公務員だから、管轄内の消防士に知り合いが多い。

「あ、大塚さん! 何でこちらに?」

「たまたま姪が通う幼稚園の夏祭りに、姉と一緒に来てたんだ。支柱が倒れて彼女の背中に当たった拍子に、出店で使っていた鉄板が手に当たって火傷してる。打撲もあるから担架で運ぶのは背中が当たって痛いと思う」

 二人のやり取りを、私と私の怪我を診てくれている隊員さんが聞いている。

「大塚さんがそばにいてくれてよかったです。火傷については最初の処置が適切だから、そこまで酷くならずに済んでますね。状況もわかりましたし、病院に向かいましょう」
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