私の彼は、一途な熱血消防士
 その言葉を聞いた誠司さんは、そのまま私を抱き上げた。園児はもちろんのこと保護者や先生、そしてこの場に駆けつけた隊員さんたち、そして何より私が一番驚いた。

「え、……ええっ!?」

「バスタオル、ずれたら下着が透けて見えるでしょ?」

 慌てる私に、誠司さんの冷静な声が頭上から聞こえた。

 そうか、誠司さんは隊員さんたちに私の下着が見えないよう配慮してくれたんだ。ようやく状況を理解した私は、おとなしくされるがままで救急車の中に運び込まれた。

「……さっきの件ですが、愛美先生の姿を見せたくなかったのど、あいつらに触れさせたくなかったんです」

 救急車の後部に座った私の隣で、誠司さんは私にしか聞こえない小さな声で耳打ちした。


 救急車が向かった病院は、小春たちが勤務する市立病院だった。

 病院に到着し、誠司さんに抱きかかえられたまま救急車から降りると、幼稚園の上履きを履いたままだったことに気付いた。けれど、もう今さらだ。

 私の表情に気付いた誠司さんが、心配そうに私の顔を覗き込む。

「腕と背中、さっきより痛むんじゃないですか?」
< 133 / 305 >

この作品をシェア

pagetop