私の彼は、一途な熱血消防士
 救急車で搬送されたので、帰りは路線バスを使うかタクシーを拾うしか交通手段がない。
 歩いて帰れない距離ではないけれど、今は七月、夏の盛りで気温が高く、私の左腕を冷やしてくれている保冷剤がすぐに溶けてしまいそうだ。

「大丈夫、姉に連絡して迎えに来てもらいます。美波も愛美先生のこと心配してると思うから、姉を呼べば美波もついてくると思うけど……」

 誠司さんの提案に、私は驚きのあまり、右手に持っていたペットボトルを落としそうになる。

「え!? そんな、美波ちゃんのお母さんにもご迷惑がかかかっちゃうじゃないですかっ」

 ただでさえ、今日は誠司さんもわざわざ休暇を取って夏祭りに足を運んでもらった上に、病院にまで付き添ってもらったのだ。申し訳なさで胸が苦しくなる。

「いや、迷惑だなんて考えないで。俺は、愛美先生の怪我が心配で、身内でもないのに勝手に付き添っただけで、逆に愛美先生に対して迷惑を掛けてるんだから」

「私は、大塚さんが付き添ってもらえて、すごくありがたかったです。大塚さんは仕事柄、私なんかより怪我に対する知識もあるし、火傷した時も迅速に処置して下さって、ものすごく安心できました」

 本人を前にして、こんなことを言うのは自分が不甲斐なく思えて仕方ないから、とても恥ずかしい。けれど、きちんと感謝を伝えなければ。

「本当に、ありがとうございました」

 お礼の言葉を口にすると、誠司さんの顔がほんのりと赤く染まった。
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