私の彼は、一途な熱血消防士
 私の返事にさつき先生はひたすら残念がりながら言葉を続けた。

「うわあ、本当にもったいない! イケメンは目の保養よ。美波ちゃん、朝はお母さんが幼稚園に連れて来るんだけど、日中はお仕事されてるからお迎えは基本的におじいちゃんやおばあちゃんなんだけど、たまにあの人がお迎えに来られるのよ。今度はいつお迎えに来るかわからないけど、絶対見て! 顔だけでなく身体もめっちゃすごいんだから」

「身体もすごいって……先生、どこ見てるんですか?」

 半ば呆れながら返事をする私に、さつき先生は笑いながら言葉を続ける。

「どこって、半袖Tシャツとジーンズってラフな格好でお迎えに来たことがあるんだけど、胸板がぶ厚いし二の腕の筋肉もすごくってね。めっちゃ筋肉質! 学生の頃スポーツをしていたんだろうと思うけど、あれは絶対鍛えてるわよ。何をすればあんなに筋肉が付くのかしらって、私だけでなくって周りの保護者さんたちも見る目がすごかったのよ。それこそ他の先生たちにも聞いてみて。みんな私と同意見だから」

 さつき先生がそこまで言うのだからきっとそうなのだろう。

「先生が嘘をおっしゃってるとは思ってませんから大丈夫です。それよりさつき先生、早くゆり組のお掃除終わらせてお昼にしましょう。私ももうすぐ掃除終わりますよ」

「あ、そうだね。まだ慣らし期間だから、給食がないのはつらいわ……だれか私にお弁当作ってくれないかな」

「本当に。一人暮らしを始めたら、だれもごはんを作ってくれないって当たり前の事実に打ちひしがれてます」

「あはは、その話、お昼の時間にゆっくり聞かせてもらうわよ。でもその前に掃除しなきゃね!」

 さつき先生はそう言うと、ゆり組の教室に戻って行った。その後姿を見送ると、私も掃除の続きを始めた。
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