私の彼は、一途な熱血消防士
 私たちはそれぞれの車に乗り込むと、車を発進させた。

 私は交通渋滞に巻き込まれながら、ゆっくりと安全運転で実家へと向かった。


 実家に戻ると、在宅していた母に昨日幼稚園で起こった出来事を説明した。ただでさえこんな時間に戻ってきた私に驚いた母は、怪我は大丈夫なのか、痕は残らないか、いろいろと質問攻めにあった。火傷は幸い痛みも引いており、見た目もそこまで目立たない。けれど打撲はしばらく治らないので、日曜日まで実家で過ごすことを伝えた。

 そして持ち帰った洗濯物を洗濯機に入れ、食材を冷蔵庫の中に入れると、早速母が洗濯を始めた。

 一人暮らしを始めて、母のありがたみが本当に身に沁みる。

 背中に負担がかからないようにとクッションを用意してくれたり、いつもならいろいろと用事を言いつけたりされるけど、今回に限ってはそのようなことは一切ない。
 まるで小さい頃に戻ったように、全てを母に任せっきりだ。

 私は無事に実家に到着したことを知らせるために、バッグの中からスマホを取り出した。

 誠司さんに、なんてメッセージを送ろう……。

 いろいろ考えながら、結局はシンプルな文面になった。

『お仕事お疲れ様です。無事に実家に到着しました。日曜日まで実家で過ごすこと、母に伝えました。お仕事頑張ってください』

 メッセージの後にスタンプを押して、スマホの画面を閉じる。

 バッグの中にスマホを片付けると、洗濯機を回して戻ってきた母が私に声を掛けた。

「愛美、お昼ごはんはどうする? 暑いしおそうめんでいい?」

「うん。何でもいいよ、任せる」

「『何でもいい』が一番困るのよね」

「あはは、ごめんって」

 私たちは、久し振りにのんびりとテレビを観ながらお茶を飲んだ。
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