私の彼は、一途な熱血消防士
「部屋の鍵、大家さんに言って交換してもらえないかな? こんなことがあって、愛美も不安だろう。大家も家賃収入がないとやっていけないんだし、交渉してみてもいいんじゃないか? それから……、盗聴器は仕掛けられてないから、安心していいよ」

 今回の空き巣を理由に引っ越すことも考えていたので、その提案に私は目から鱗が落ちる思いだった。

 引っ越してまだ日が浅く、荷物も少ないからもう少しセキュリティの面でしっかりした物件を探すつもりだったけれど、引っ越しするには先立つものがいる。それまで実家で節約していたから、金銭的に少しは余力があるけれど、異動ではないのに引っ越すことに抵抗もある。

 誠司さんの「盗聴器は仕掛けられていない」の言葉に安堵した私は、大きく息を吐いた。

「そうですね、大家さんに相談してみますね。盗聴器がないなら、引っ越す必要はなさそうだし……。それはそうと、お昼ごはん、どうしましょう?」

 冷蔵庫の中はほぼ空っぽな状態で、何かを作るにも食材を買いに出掛けなければならない。

「昨日からずっと気が張っているから疲れてるだろう? 今はまだ感じないかもだけど、全てが終わったら力が抜けて動けなくなるから、今のうちにしっかり食べて力つけておこう。それに今年の夏も猛暑続きらしいから、食べてないと夏バテするぞ」
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