私の彼は、一途な熱血消防士
 見かねた誠司さんが、私を部屋の中に入るよう促し、日浦夫妻と話をしてくると言って、日浦くんが借りている隣の部屋へと移動する。

 私は一人、部屋に戻って、買ってきた食材が傷まないよう冷蔵庫の中にそれらを片付けた。

 部屋は閉め切っているので、蒸し風呂状態だ。

 いつもなら、窓を少し開けて空気を入れ替えるけど、今日はそんな気になれない。リモコンを手に取ると、すぐにスイッチを点けた。

 恐くて自然と涙が出てくる。拭っても、なかなか止まらない。呼吸が少し苦しくなり、過呼吸を起こしそうになったので、私は口元にハンカチタオルを押し付ける。

 そうすると、少ししてから呼吸が楽になってきたので、私は涙を拭う。化粧はすでに汗で流れ落ちており、ファンデーションで汚れることはなかった。

 私は洗面所で顔を洗うついでに化粧も落としていると、その間に誠司さんが部屋に戻ってきたようだ。

 そして私が部屋に戻ると、私を抱きしめる。

「もう、これで大丈夫だから」

 誠司さんは、私の背中を優しく撫でた。

 日浦夫妻が部屋の前にいたのは、家宅捜査が終わり次第部屋を引き払うとのことで、様子を見に来ていたのだという。

 日浦くん自身も自分の行き過ぎた行為を反省しているとのことで、もし仮に有罪が確定して刑務所に入ることになったとしても、釈放されたら日浦くんの親戚が住む九州に移住し今後は二度と私の前に姿を現さないと言っているそうだ。

 日浦くんには、これから法律で裁かれて、きちんと反省してほしい。

 そして、約束通り、二度と私たちと関わり合うことがないように努めてほしい。

 願うのは、それだけだ。
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