私の彼は、一途な熱血消防士
 そしてこのサンプルの衣装も、こども園へ引っ越しの際に持って行く予定だった。

 給食が終わり、午後からは教室で練習をして、降園時間が訪れる。

 いつものように、お迎えに来た保護者へ園児を引き渡していた時のこと。

 通常なら、お迎えは正門から幼稚園に入ると、園庭を横断して各教室の前にやって来る。そのお迎えの保護者に紛れて、大森さんの姿が見えた気がした。黒いコートに黒いパンツ姿で、教育実習中の派手な服装とは似ても似つかない。

 ちょうど園長先生が通りかかったので、園児の引き渡しをお願いして大森さんの姿が見えた正門へと急いだ。

 ばら組の園児は、半数ほど引き渡しが終わっている。いつもなら園庭で遊んで帰る園児も多いけれど、クリスマス会を明日に控え、準備のためまっすぐ帰るよう事前にお知らせを出していたので、みんなまっすぐ家に帰っている。

 もし大森さんがいたとしたら、何のためにここへ来たの?

 正門近くへとやって来たけれど、大森さんらしき人物は見当たらない。
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