私の彼は、一途な熱血消防士

一難去ってまた一難 7

「子どもたちに罪はないけど……、愛美先生、この私に恥をかかせてくれた分は、きっちりと利子をつけて返してもらわなきゃ気が済まないわ」

 そう言って、次々と衣装に手を掛けていく。私は背中の痛みに耐えながら、何とか大森さんの足にしがみ付く。

「ちょ……、何すんのよっ。放しなさいよ!」

「それはこっちの台詞よ! やめなさい」

 大森さんは私の足に気を取られ、衣装を破る手が止まっている。

 しばらくもみ合いをしていたけれど、大森さんが何を思ったのか、肩から下げていたショルダーバッグの中から何かを取り出した。それは、コンビニなどで売っているライターだ。まさか……

「あーあ、これ、もう着られないですよね? 修繕するにも時間がかかるでしょうし。……もう、これってごみですよね? ごみは燃やさなきゃ」

 大森さんはそう言うと、衣装の一つに手を掛けて、ライターで火を点けた。

 園児たちの衣装はナイロン素材のものが多く、熱に弱い。火を点けられたら終わりだ。
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