私の彼は、一途な熱血消防士
 喋ることができないと医師から説明を聞いたのか、また後日改めて伺いますと言って病室を後にする。

「もう、無茶しちゃダメよ。お母さん、幼稚園から連絡があって心臓が止まるかと思ったわ」

 母の言葉に、視線を落とした。声を発することができないので、表情で自分の気持ちを伝えるしかない。

「大塚くんも心配してたわよ。明日の勤務明けにここへ来てくれるって」

 誠司さんの名前が出て、救急搬送された時の救急車に誠司さんがいたことを思い出した。

 そう言えばあの時、誠司さんの声を聞いて安心したんだよな。安心して気が緩んで意識がなくなったけれど、搬送時に意識を失くせば救急隊員さんたちは気が気じゃないよな。

 そう思うと、とても申し訳ない気持ちになる。

「愛美も今日は疲れてるでしょうから、お母さん帰るわね。とりあえず、今日はゆっくり休みなさい。また明日、着替えを持ってくるからね」

 母も私を気遣って、長居をせずすぐに部屋を後にした。

 一人になって、何もすることがないのでぼんやりと天井を眺めている。
< 289 / 305 >

この作品をシェア

pagetop