私の彼は、一途な熱血消防士

一難去ってまた一難 8

 目が覚めると、見慣れない天井が見えた。ここはどこだろう……

 視線を動かすと、点滴の入った袋が吊り下げられている。ということは、ここは病院?
 部屋の広さからして、どうやら個室にいるようだ。

 私は布団の上に出ている右手へ視線を移すと、肘の内側に点滴の針が刺さっていた。

「愛美!? 気が付いたのね?」

 私の左側から母の声が聞こえる。
 母がナースコールのボタンを押すと、ちょっとして医師と看護師が病室に現れた。

「西川さん、具合はいかがです? 喋れそうですか?」

 医師の声に返事をしようにも、上手く声が出ない。

「煙と消火剤を吸い込んだせいで、声が出しにくいようですね……。数日うちには、喋れるようになると思います。怪我のほうは、背中を強打した時に肋骨にひびが入ってます。ひびも骨折になりますからね。肺に損傷はありませんが、危ないところでした。足の火傷は、残念ながら痕が残ると思います」

 医師が、私の身体に負った怪我のあれこれを淡々と語る。それをまるで他人事のように聞いていた。

 医師と看護師が病室を後にすると、続けざまに今度は警察の人が事情聴取にやって来た。
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