私の彼は、一途な熱血消防士
 美波ちゃんのお母さんのお顔をじっくり見るのは今日が初めてだけど、ナチュラルなメイクなのに、目鼻立ちがはっきりとしたとても美人さんだ。

「うん。まなみせんせいもおかいもの?」

「そうだよ。先生、一人暮らしだから自分でごはんの用意しなきゃなんだ」

 そう言って私は自分の買い物かごの中を美波ちゃんに見せると、納得したのか頷いている。

「失礼ですが、愛美先生のご実家は……」

「実家は市内なんですけど、ここからだと車で三十分はかかる距離にありまして、この春から一人暮らしを始めたところなんです」

 実家のある地区名を言うと、美波ちゃんのお母さんも納得の表情だ。

「ああ……あそこからだと通勤は大変ですよね。朝も通勤ラッシュに巻き込まれたら車の逃げ道がないですからね」

 美波ちゃんは昨年途中こちらに編入してきたとのことで、それまでは大阪に住んでいたせいかまだ地元の話題についてこれず、一人きょとんとした表情を浮かべている。

「せんせいは、きょうはなにたべるの?」

「そうだねえ、どうしようかな。お惣菜で何かいいのが残ってたら、それで済ませようかな。……でも、あの人だかりの中に入っていく度胸はないなあ」
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