私の彼は、一途な熱血消防士

出会い 6

 毎日が慌ただしく過ぎていき、あっという間に六月になった。

 天気予報では、梅雨入り宣言がされて、毎日じめじめとした天気が続いている。

 あの日スーパーで美波ちゃん親子に遭遇後、何度か彼が美波ちゃんのお迎えに来ていたようだけど、タイミング悪く私は他の保護者とその日あった出来事を話していたりしていて、じっくりと顔を合わせる機会はなかった。

 向こうも私の顔なんてほとんど見たことがないだろうし、逆にジロジロ見られたら不快に思うだろう。だから、幼稚園教諭と保護者の距離感はこのくらいがちょうどいい。

 六月に入ってからは、仕事が忙しいのか用事があるのか、お迎えは美波ちゃんのおばあちゃんがほとんどで、彼の姿を見ることはなかった。

 ちょうど今、教育実習生を受け入れており、一人はさつき先生のクラスに、そしてもう一人は沙織先生のクラスで実習を受けている。

 きっと彼がお迎えに来ていたら、実習生たちも色めき立って、キャアキャア騒いでいたことだろう。

 園児たちに加え、教育実習生の指導で忙しい時期に、私の色恋ごとなんて考えるのはよそう。

 そう思っていた。

 でも、その思考が崩れることになったのは、六月の賞与が出た週末の夜のことだ。
< 33 / 305 >

この作品をシェア

pagetop