私の彼は、一途な熱血消防士
 金曜日の夜、私はアパートで食事を済ませた後、クローゼットの中を整理していた。冬物のコートなど、クリーニングに出していた衣類のビニール袋を外して衣装ケースの中にしまっていた時、スマホが鳴った。

 それは電話ではなく、無料通話アプリのメッセージ受信の音だった。衣装ケースの中にしまい終え、防虫剤を入れて作業が終了すると、ビニール袋をゴミ箱の中に捨て、スマホを手に取った。そこには高校時代の同級生で、現在市立病院で看護師をしている山岡(やまおか)小春(こはる)の名前があった。

 小春とは偶然にも高校三年間同じクラスだった縁で何となく仲良くなり、卒業後もこうしてたまに近況をやり取りしている。前回やり取りをしたのは、今年の二月。小春が外来から病棟勤務に異動となったと報告があった時だから、四か月ぶりだ。

 直接会って話をしたのは、一体いつだっただろう。随分前のことで記憶が曖昧だ。
 私はロックを解除してトーク画面を開くと、メッセージに目を通す。それは食事のお誘いだった。

『愛美、久しぶり! 新しい職場にはもう慣れた? 出会いのない職場だからって、女子力磨きに手を抜いてない? 突然だけど月末週の土曜日、久しぶりに色々話もしたいし、一緒に食事でもどう?』
< 34 / 305 >

この作品をシェア

pagetop