私の彼は、一途な熱血消防士
 聞けば、地方公務員が勢ぞろいだ。

「それこそ職場に若いドクターはいないの?」

 市立病院の医師に、若い人っていただろうか。ふと気になって聞いてみた。

『ドクターね……。何人かいるにはいるんだけど、研修医時代から付き合ってる彼女がいたりとか、いずれ地元に帰ったらお見合いで結婚相手を決められるから、別れなきゃならない不毛な恋愛をしたくないんだってさ』

 小春の話を聞いて驚きを隠せない。今どき結婚相手を自分の意思で決められないこともあるんだ……

『というわけで、愛美もしっかり頭数に入れてるから、よろしくね!』

「え、ちょっと待ってよ。異業種交流会って言っても、実質合コンでしょ? 私、園児以外、本当に限られた人としか接していないから無理だって」

『愛美、あなたは毎日幼稚園児というピッチピチの若者と触れ合ってるでしょう? 私、病棟に異動してから、入院してる患者さんのほとんどが年金生活をしている、いつあちらの世界からお迎えが来るかわからないご老人ばかりなの。ナースコールが鳴るたび、毎回これが患者さんとの最期になるかも知れないって思いながら駆けつけるの。これって私、可哀想だと思わない?』

 それを言われると、返す言葉がない。

『だから、新しい出会いを求める私に付き合って、愛美も新しい出会いを見つけよう、ね。決まり! ということでよろしくね』

 結局小春の一方的な押しに圧倒され、言い返す間もなく通話が終わった。

 あまり気が進まないけれど、同世代の知り合いを増やす機会になればいいだろう。

 小春が言うように、学生時代ならまだしも、大人になってから同世代の人と接する機会がなくなり、職場の人と接するだけで自分の世界が狭まった感は否めない。

 私は立ち上がるとクローゼットを開けて、月末の異業種交流会に着ていく服を選び始めた。
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