私の彼は、一途な熱血消防士
「あの……っ! 私たち藤本先生より年下だから、こちらが皆さんに敬語を使うのは当然なんですけど、大塚さん、愛美に対して敬語になってますよ?」

 小春に言われて初めて気付いた。
 言われてみれば、誠司さんは私に対して敬語を使っている。その疑問に誠司さんは当たり前のように答えた。

「ああ、愛美先生は姪が通う幼稚園の先生だからね。幼稚園にはこれからも姪のお迎えに行くから、その時担任でもないのに馴れ馴れしく話しかけてしまったら、色々と困るだろうと思って……」

 その答えに、小春は千紘さんと見つめ合い、深く頷いた。そして誠司さんに向かって言葉を発した。

「大塚さん、愛美のことめっちゃお気に入りじゃないですか」

 小春の言葉に、誠司さんは当然のように返事をする。

「姪のお迎えの時に見かけて、姪からも話を聞くようになってから、どんな人なんだろうってずっと気になってたんだ。だから、まさかここで会えると思ってなくて。愛美先生、これから姪ともどもよろしくお願いします」

「もう、お前らこのまま帰れ」

 藤本さんは、終始この調子だ。

 中井さんはニヤニヤしながら一連のやり取りを眺めている。思いの外グイグイと迫ってくる誠司さんに対して私はいたたまれなくなり、ウーロン茶を飲み干した。
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