私の彼は、一途な熱血消防士
 誠司さんは「中井の連絡先は、ブロックでいいから」などと不穏な発言をするものだから、中井さんは拗ねてしまったけれど、それだけ気心が知れた間柄の軽口だろう。

 私も車で来ているから、二次会へ行くにしてもお酒を飲まないから、場の雰囲気を壊してしまうかもと思うと二の足を踏んでしまう。みんなは気にしなくていいよと言ってくれるけど、お断りして帰宅の途についた。

 自宅に戻ると、二十二時が近い時間になっていた。

 部屋に入ってすぐにエアコンのスイッチを入れ、冷蔵庫の中からお茶を取り出すと、グラスに注ぎ入れる。そして、それを一気に飲み干した。

 美波ちゃんの叔父である『せいちゃん』こと誠司さんと、あの場できちんと顔を合わせて会話をした上に、連絡先を交換することになるとは夢にも思わなかった。

 それまで遠目にしか見たことがなかったけれど、じっくりと姿を見ると、先生や保護者さんたちがイケメンだと騒ぐ理由も納得だった。

 整った顔立ちな上に鍛えられた体型は、まるで別世界の人だ。そんな眼福な容姿の人と並ぶと、自分に自信のない私は、きっとメンタルがもたないだろう。

 遠くから見ているだけで充分だと思う保護者や先生たちの気持ちがよくわかる。

 リップサービスとはいえ、あの場であんなふうに好意を持っているようにアピールされて緊張したけれど、悪い気はしない。

 スマホをバッグの中から取り出しテーブルの上に置くと、入浴するために浴室へと向かった。
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