私の彼は、一途な熱血消防士
 学生時代、放課後の教室でみんなと進路の話になり、私は地元の短大へと進学することを話していた。将来は保育士か幼稚園教諭になりたいとみんなに話していたのを思い出す。

 自分の夢を叶えるべく短大在学中に幼稚園教諭と保育士の資格を取得し、運よく地方公務員採用試験に合格し公立幼稚園教諭として勤務しているけれど、来年からは近隣の保育所と合併して認定こども園に形態が変わる。

 さすがにここまで詳しく話す必要はないので、こども園になる件は黙っているけれど、市の広報誌などを見ればいずれ知られることだろう。

「幼稚園の先生か……、夢を叶えたんだな。おめでとう。……俺、今は昼夜逆転の生活してるから、アパートの壁が薄かったらこっちの生活音が筒抜けになるかも知れない。夜は西川さんの睡眠を邪魔しないよう、極力気を付けるよ」

 日浦くんはそう言うと、自室へと戻って行った。

 その後姿を見送ると、私は玄関のドアを閉めて施錠する。

 日浦くんとまさかの再会に、緊張の糸が解けた私はその場にへたり込んだ。

 さっきのやり取りは、ごく普通のたわいない会話だった。

 とりあえずは普通に会話ができたけど、当時の気味が悪いと思っていた感覚は今でも忘れられない。

 高校卒業から月日は経つけれど何だろう、日浦くんの見た目は普通なんだけど、私を見る目つきがどうしても生理的に受け付けないのだ。

 同じアパートに住む以上、しかも隣人だ。接点がないなんてありえない。

 私は座り込んだまま頭を抱えた。
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