氷の王子と、婚約からはじめる世界一熱い恋【マンガシナリオ】

第5話 青春、なのかもしれない

●学校、校門。朝


学園祭のゲートが立てられ、飾りつけられた学園の校門や校舎。

きよか(あっと言う間に学園祭当日)
(千隼くんは今頃、アメリカかあ……)

教室の窓から空を見上げるきよか。「女装喫茶ファビュラス」の看板と、乙女チックな内装でかざりつけられた教室内。
黒板に貼られた千隼の達筆おしながき(明らかに雰囲気が浮いている)を見てクスリと笑う。

夏実「き・よ・か~! 見た!? 見た!? 昨日の宝生くんのショートプログラム!」
きよか「う、うん。見たけど……」
(時差があるからニュースの録画映像で見ただけって言ったら怒られるかな……)
夏実「あ~もう! ちょうど今! フリーやってるところだよ! 宝生くんはショート二位だからちょうど今!」
きよか「生放送やってるのサブスクチャンネルだけだから、家のテレビじゃないと見られないよ」
夏実「あ~結果が気になる! でも演技見る前に結果知りたくない! うわああああ」

頭を抱えしゃがみこむ夏実。きよかはまあまあ、とそれをなだめながら回想。

きよか(なっちゃんに、改めて千隼くんのこれまでの大会の映像をいろいろ見せてもらったけど)
(ぶっちゃけ、直視できなかった)
(だって、あまりにかっこよくて……次に千隼くんと会った時、どんな顔をしたらいいのかわかんなくなりそうで)

千隼の演技シーンを思い浮かべる。

きよか(まあ、あんまりスケートのルール詳しくないから気楽に見れないってのもあるけど……)
きよか「なっちゃん。今はまず、私たちにできることをがんばろ」
男子a「そうだぞ!」

しゃがんでいるきよかと夏実を、腕組み仁王立ちで見下ろすクラスメイト男子a。フリフリのメイド服姿。
その他、メイド服姿の男子たちがずら~っと並ぶ。

男子b「今日はガンガン売り上げて、飲食系模擬店の一位を狙う!」
きよか「うん……がんばろ!」
夏実「っしゃあ……。こうなったら宝生くんに負けないようこっちもやったろうじゃない!」

おー!とこぶしを突き上げる一同。

かくて学園祭スタート。
きよかは厨房スタッフとして奮闘。
パツパツのメイド服に身を包んだ男子たちが、ノリノリで接客。ココアに生クリームで♡を書いたり、ムキムキのマッスルポーズで撮影に応じたり、大人気。
途中で食材が切れ、きよかと夏実があわてて走って近所のスーパーに買いに行く一幕も。
開始から終了まで、めまぐるしいながらも笑いの絶えない一日だった。
そしてみごと飲食模擬店で売り上げ一位を獲得。クラス全員で大喜び。

きよか「あ~つかれた……」

夕方、外が暗くなり後夜祭の時間。
きよか、ぐったりして教室の窓にもたれかかる。他のクラスメイトたちは全員後夜祭に参加しているので教室にはきよかだけ。
窓から、校庭で焚かれているやぐらの炎が見える。きよか、それをじっとながめる。

きよか「でも、すごくたのしかったな」
(千隼くんがいてくれたら、もっとたのしかったかな……)

きよか、千隼と一緒に作ったガーランドを手に取り、内装係のみんなで一緒に作った日のことを思い出す。

きよか「あっ! そういえば千隼くんの試合の結果!」

きよか、あわててスマートフォンを取り出すと千隼からlineが来ている。
「優勝した」「帰る」という二言だけのメッセージだった。

きよか「えっ、もうちょっと詳細とか、感慨とか……」

きよか、ニュースサイトにアクセスし、アメリカ大会の結果を伝える記事を探す。
するとちゃんと「フィギュアスケート米大会、宝生千隼圧倒的演技でV」という見出しが出てくる。アクセスすると、いつも通りの無表情で表彰台に立っている千隼の写真が載っていた。

きよか「あはは、本当だ。……すごいな」
(すごくうれしいのに……なんだか千隼くんが遠くの世界の人みたいに感じる)
(会いたいな……)

しばらく、無言で校庭のにぎやかな様子をながめているきよか。するといよいよ、後夜祭のメインイベント打ち上げ花火の時間に。

きよか「あ、そろそろ花火上がるかな?」

きよか、座っていた椅子から立ち上がる。と同時に、教室の戸が勢いよく開く。

きよか「……千隼、くん?」

振り返るきよかの背後で、打ち上げ花火があがる。教室の入口に立っているのはキャップにジャケットという私服姿の千隼だった。

きよか「え? え? 試合は?」
千隼「もう終わった」
きよか「で、でも、まだアメリカにいるんじゃ」
千隼「帰るってメッセージ送った」

うろたえるきよかに、ズンズン近づいてくる千隼。ほとんどくっつきような距離まで迫ってくる。

千隼「アメリカにいる間、ずーっときよかのこと考えてた」
「すっごく会いたくなって、急いで帰ってきた」
きよか「……私もちょうど、千隼くんに会いたいなって思ってたとこだよ」

ドーン、とふたりの背後でふたたび花火が上がる。
千隼、窓ガラスに手をつき壁ドン体勢。

千隼「キスしたら永遠に一緒にいられるんでしょ」
きよか「えっ」
千隼「……後夜祭のジンクス」

千隼が顔を近づける。きよか、驚きのままそれを受け入れる。
ふたりの背後でふたたび花火が上がり、まさにキスしそうになったその時。

夏実「ほらーっ! やっぱり宝生くんじゃん!」
男子a「まじかよ!? お前目ぇよすぎ……ってあらら」

夏実ほか、内装係だったクラスメイトたちが教室に乗り込んでくる。

女子a「もしかして……いいところだった?」
夏実「えっ! きよかごめん気にしないで続けて私たち壁だから!!」
きよか「い、いいいいいいいや別にそんなことは」

あわてて否定しようとするきよかの口を、千隼が手でふさぐ。

千隼「うん。すっごいいいところだったんだけど、どうしてくれんの」

しれっと肯定する千隼に、ギャラリー全員赤面。

男子b「お、お前ら……いちゃついてんじゃねー!」

わーっと千隼に飛びかかる男子たち。夏実たちも近づいてきて、みんなで笑う。
千隼のメダルを見せてもらったり、女装メイド服姿の写真を見せたりしてはしゃぐ。
みんなで校庭に行こう!という流れになり、きよかが千隼の手を引く。
フッとわらって、それについていく千隼。

きよか(今年の学園祭は、忘れられない思い出になりそうです)
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