私が大好きな君を殺すまで

出逢う

また、傷が増えてしまった…今日は機嫌が特に悪い日だ。
なるべく静かに過ごさないと。
「おいっ。お前さっきから何こそこそしてんだよっ。あぁーむかつくな。なんだその目は。あいつにそっくりで腹が立つ。」
「やめてっ。」
私の髪を引っ張り上げる。
「お前さえ生まれてこなければ。この邪魔者っ。早く死ねよ。」
何度も聞いて来た言葉にはもう傷ついたりはしない。
「ごめんなさい。ごめんなさいっ…」
「お前、今日は外で寝ろっ。」
「うっ。」
外に投げ捨てられた…寒い。裸足にボロボロな薄着一枚。どこで寝ようかな…まだ12月後半だが夜になるととても寒い。このまま死ぬのかな…まぁ、それはそれでいっか。
とりあえず近くの公園の遊具に寒さを防げそうなのがあったはず。そこでなんとか生き延びよう。辺りの家はイルミネーションの飾りが輝いている。
通り過ぎる人の中には、手を繋いだ恋人たちや、両親に挟まれ手を繋いでサンタさんの歌を歌っている子供などみんな幸せそうだ。
そういえば今日はクリスマスイブだった。
私は一度もプレゼントをもらったことがない。なんで私だけ?周りのみんなはいっぱいもらっていたのに。いい子にしかこないと聞いて勉強も運動も人助けも一生懸命頑張った。でも、クリスマスプレゼントが届くことは無かった。私は悪い子だった。生まれちゃダメな子だった。
あぁ、寒い。クリスマスというおめでたい日に死ぬのだろうか。お腹すいた…今日は何も食べてない。普通の幸せを知りたい。普通に家族がいて、普通に温かいご飯を3回食べて、普通に柔らかい布団の上で寝て、普通に学校で勉強して、怪我をしたら普通に痛がって、風邪をひいたら誰かに看病してもらう。私が望むのはただそれだけ。これ以上は何もいらない。
ポタッポタポタ
あれ…?雨が降って来た?
いや、違う。わたし、泣いてる…?
うわっ何これ止まんない。泣くということが久しぶり過ぎて驚いてしまう。
わたし、ちゃんと生きてた。悲しいって感情、悔しいって感情まだ少しはあった。死んでなかった。人生で初めてこんなに大泣きした。
涙を拭った視界に広がった満天の星空は世界で一番綺麗だった。私は泣き疲れてそのまま眠りに落ちた。

…いっ。…おい。おいっ!
ハッ!
「あんた、大丈夫か?」
え…誰?てかここは…そっか、昨日は家から追い出されて、この公園で寝たんだった。
「あ、すみません。大丈夫です。」
「なんでこんなとこで寝てんだよ。死んでるんじゃないかってめっちゃ心配したわ。」
「本当にすみません…」
は、恥ずかしい…
「それにしてもあんた、その傷大丈夫かよ?」
あ…
「大丈夫ですよ。わたし、転びやすくて…」
私はいつも家にいるしお父さんからつけられた傷を処置する薬も絆創膏もないからほったらかしにしている。だけど、側から見れば軽症とは言えないのかも。
「そうか…。少し待っててくんない?」
「えっ?あ、はい。」
な、なんだろう。その男の子は、走って公園を出て行った。男の子と初めて話をして私の心臓はもう破裂しそうなぐらいバクバクだ。
今、何時だろう。幼稚園児がバスに乗るのに見送られているから、8時くらいだろうか。
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