実家に冷遇されたポンコツ地味令嬢ですが、魔術学園で活躍していたら隣国王子の溺愛が始まりました
 カイはギュッと手を握る。

「あなたがくだらないことで、その才能を台無しにしてしまうのは嫌だわ。優しさのあまりに、自分を粗末にしないで」
「うん。……ごめんなさい」

 しょげた私に、カイは微笑む。

「ごめんなさい、私も言いすぎましたわ。助けていただいたのに、先に叱りつけてしまうなんて」
「私が悪いんだから、カイは謝らないで!」
「……叱ったのは魔術学園の同期としての言葉ですわ。カイ(・・)としての言葉としては……心からの感謝と、勇敢さへの敬意を伝えたいわ。ありがとう。嬉しかったわ」
「カイ……」
「魔術も立派だわ。水魔法、次の試験の結果が楽しみね。怠らず研鑽するのよ?」
「カイのおかげだよ!」

 手を繋ぎあったまま、微笑み合う私たち。
 そこで、アンジャベルさんが呆然とした顔で私たちを見ていた。

「……奨学金女……お前、そんな魔法が……使えたのか……?」
「カイが教えてくれたの。すごいんだよ、カイは教えるのが上手だし、自分だって課題や宿題があるのに、私にいつもとても親切に、いろんなことを教えてくれるの」

 私は立ち上がり、背の高いアンジャベルさんをまっすぐ見上げた。
 緑の瞳と視線がかちあうと、彼はパッと目を大きくした。
 じっと、私を見つめている。

「お願い。カイが気に入らなくても、カイを暴力や集団で脅すのはやめて……みんな穏便にできないかな?」
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