しあわせのレシピブック

シュトロイゼルとエレの日常ぱーとしっくす

 最近のエレはご機嫌です。
「ふむ……」
 シュトロイゼル先生の家。仕事の休憩中。本のページを捲る指は軽やか。ページを見る瞳はきらきら。
 エレの周囲のひとたちから見ても驚く程に、今のエレはとても楽しそうにしています。
 鼻歌すら聞こえてきそうなご機嫌なエレに。
「順調かい?」
「シュトロイゼル先生! はい、とても」
 エレの笑顔を直視して、シュトロイゼル先生は眩しそうに目を細めます。
「それは良かった。どんなことが書いてあるか、私には直接読むことは難しそうだけれど……興味はあるからね。後で是非教えて欲しいな」
「もちろんです! だんだんはっきりと読めるようになってきたので、お教え出来ることもあるかと思いますわ」
 そう言いながらも、エレは肩を傾けます。シュトロイゼル先生は苦笑いを浮かべました。
「長く本とにらめっこをしているからね。息抜きも必要だよ」
「そうですわね……。って、こんな時間じゃないですか。そろそろお仕事に戻りませんと」
「急がなくてもいいんだよ?」
「いえ! わたくしお仕事はしっかりしますわ」
 ぱたぱたと素早く身支度を整理し、本を大事そうに閉じるとエレは家事代行の仕事に戻ります。
 エレの後ろ姿を見送ったシュトロイゼル先生は、本に目を向けました。ぱらぱらとページを捲ります。
 書かれている文字は、シュトロイゼル先生にも判別出来ないもの。目を凝らしてみても、見たことがない文字です。
「……不思議な子だ」
 ぽつり、呟き。静かな部屋に。
「うなー」
 ……鳴き声が響きました。
「ロイ、おやつはまだか」
「ああ、遅くなってすまないね。すぐ用意しよう」
「つい四半刻前にもそう言っていたが」
「あはは……」
「あははではないが?」
 たしたしとクルールのしっぽがシュトロイゼル先生の足を叩きます。シュトロイゼル先生は笑みを浮かべたまま、クルールを連れてキッチンへと向かったのでした。
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