憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


「あの……苗字も咲村にするって本気ですか?」

「うん、そのつもりだけど迷惑? 亜矢は俺の苗字にしたかった?」

「いえ、そういうことではないのですが……なんだか色々と申し訳なくて。私のせいで和登さんはお義母さん達と縁を切るような感じになっちゃいましたし……」

「確かに今まで育ててくれた恩はあるけど、でも、俺は俺自身が幸せになるために行動した決断だから。俺は亜矢を全力で守るよ」


 話し合いは上手くいかなかったけれど、和登さんの表情は、何かが吹っ切れたような表情になっていた。私も和登さんのような強い人間になりたい。そう思い自分なりに覚悟を決める。


「和登さん、私の親に挨拶なんてしなくて良いです!」

 「何言ってんの」と細い目を向けられた。

「俺は亜矢の苗字になるんだし、亜矢の家族に気に入られたい。亜矢の家族とは仲良くしたい。勝手に入籍なんてできないよ」

「で、でも……私の両親は祖父が残してくれた遺産で暮らしてますし、働いてもいないですし」

「働かなくて良いほどお金が手元にあるんなら、別に働かなくても良いと思う。そんなんで亜矢の両親に対する評価は変わらないよ」

 和登さんは大人だ。九個の年の差はこうも違ってしまうのかと実感させられる。


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