憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


「大丈夫ですよ。和登様は、亜矢様には生きてお側にいてくださることがかけがえのない財産だとおっしゃってましたから」

 嬉しい。けれど、和登さんは私にではなく、赤間さんにばかり、私のことを言っている。

「私は、和登さんから全部の言葉を聞きたいのに」

 もっと私にも本音をぶつけてほしい。そう呟くと、

「嬉しいことってつい、他人に聞いて欲しくなるものだと思うんです。というか、私からしてみたら亜矢様もです。お二人を見ていたらつくづくそう思います」

 赤間さんは強く頷いた。

「まあ、私はお二人の惚気を聞けて嬉しいですけどね」

 私も和登さんのことで嬉しいことがあると、つい、赤間さんに聞いてほしくなる。

 だとしたら、和登さんが赤間さんにする報告を聞けるのは本来ならばありえないことで、贅沢なことなのかもしれない。

 むず痒かった胸の内に、ほかほかと温かい光が宿った。

 「さあ、行きましょう」と、赤間さんに腕を引かれ、玄関で待っててくれていた和登さんの元へ駆け寄る。

 スーツ姿の和登さんを見るのは、私の両親に挨拶をしに行った時以来だ。髪もセットしていて、とても色気が増している。


「和登さん似合ってます! あの、ネックレスまで頂いてしまって。ありがとうございました」

「よかった。凄い似合ってる。ちょうど、指輪と同じデザインだったから、どうしてもほしくて」

 和登さんの左手には、私にくれた指輪と同じデザインの指輪がはめられていた。


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