幽霊になったあの日から恋をして
そうしてついに、黒瀬家の皆様が来た。
お母さんは満面の笑みで、挨拶をしている。
そして、夢華は...早速優様に近づいてる。
「彩も挨拶をしなさい!」
「っ!すみません。」
「申し訳ございません。」
「いいんですよ。これぐらい。」
そう言ってくださったのは、黒瀬家先代社長の、黒瀬光牙(くろせこうが)様だ。
「自己紹介が遅れました。笠音家長女の笠音彩。と申します。何卒、よろしくお願いいたします。」
「まぁ。なんて礼儀正しい子なの!」
そしてこちらが、黒瀬愛花(くろせあいか)様。
「いえいえ。そんな事ありません。私の妹、夢華の方が礼儀正しいと思います。」
「あら、そうなの?でも、ご挨拶もせずに客人に近づくんでしょう?」
「そうですが...」
そう言おうとしていたお母さんの言葉を遮って、愛花様が言った。
「礼儀正しくないのなら、夢華ちゃんを優の嫁にするのはやめてしまおうかしら?」
「っ!それだけは...」
...?どうしてそこまで夢華の、婚約にこだわるんだろう。
「そうねぇ。まぁまだ時間はありますし、ゆっくり決めていこうかしらね。」
「!ありがとうございます!」
お母さんが顔を輝かせる。
「それよりも、優!」
優様の顔が一瞬、苛ついた顔になった。
「はい、お祖母様。」
あれ?私の見間違いだったのかな?
「ご挨拶を。」
「はい。」
ものすごい笑顔で、優様が自己紹介をする。
「皆様ご存知でしょうけれども、私の名前は、黒瀬優と申します。これから一月ほどよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。優様。」
お母さんが返事をする。
私も返事をしたほうがいいわよね?
「短い間ですが、よろしくお願いします。優様」
「...。お前みたいなのが俺に話しかけるな。」
ものすごい小さな声で言われた。もしかして私の聞き間違いかな?
「あの...優様?」
小さな声で尋ねる。
「だから言っただろう。お前みたいなのが俺に話しかけるな、と。」
聞き間違いじゃなかった...
「申し訳ございません。」
納得したのか、私のもとから離れていく。
やっぱり。夢華が何かを吹き込んだのかな?
でもまだ優様以外の人には伝えてないみたいだし、まだあの事は言わなくていいか。
そうして私は安心してしまっていた。
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