Close to you


 ──新しい家政婦さんだ。


 家庭教師の先生と同じくらい、この家では家政婦さんが辞めてしまう。


 原因はあの通り、お母さんがすぐ怒声をあびせるからだ。


 一番はこの家の空気に嫌気がさして……だけど。


 私は脱いだ靴をそろえながら、家政婦さんの横顔を思い返していた。


 目元の凛々しい、芯の強そうな人だと思った。黒髪をきっちりシニヨンにしてまとめ、背筋をピンと伸ばしているのを見ると、融通がきかなさそうな印象も受ける。



 ──『奥様、それではお嬢様の健康に良くありません』



 でも、きっと悪い人じゃない。


 それだけは確信した。


 そこまで考えて、気持ちが少し暗くなる。



(今回の家政婦さんは、どのくらい保つだろう)



 私は洗面所で手洗いとうがいをすませると、階段を上がり自分の部屋に向かおうとして……ぶつかりそうになった。


 突然、目の前に誰かが現れたのだ。



「っ!……失礼いたしました」



 家政婦さんとはち合わせしてしまった。
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